★★★☆☆
あらすじ
引退して悠々自適の生活を送っていた主人公は、最近出所したばかりで疎遠だった孤児院時代の兄貴分と久しぶりに再会する。
シリーズ第3作。116分。
感想
引退した主人公が現役復帰し、過去に禍根のあるかつての兄貴分と戦う物語だ。だが、20年近くを刑務所で過ごし、実戦経験ゼロのロートルのボクサーであるこの兄貴分が、いきなりタイトルマッチに挑んだのは、いくらなんでもリアリティがなかった。
せめて何試合かやって、圧倒的な実力を見せつけてからにして欲しかった。最初の試合がタイトルマッチという話題性が欲しいのなら、スパーリングで実力者たちに圧勝するなどして業界内の評価を上げるとか、やりようはあったはずだ。20年前は強かったから、だけではさすがに無理がある。予定していた挑戦者が急に出場できなくなったとか、主人公にマッチメイクの裁量があったとか、有利な外的要因もあるにはあったが、それでも納得は出来ない。
とはいえ、この敵役となる兄貴分を演じるジョナサン・メジャーズは、何を考えているのか分からない不敵な態度で得体の知れなさがあり、なかなかの存在感を放っていた。劇中でも言及されていたが、彼の境遇はロッキーに似ていなくもない。
クライマックスはもちろん、二人の対決だ。前の試合で相手はダーティな戦い方をしていたので、この試合でも同じような戦法を取るのかと思っていたのに、案外とおとなしくて拍子抜けしてしまった。
これはボクシングへの敬意と、その後の展開を考慮してのことだろうが、それなら前の試合もそうやって戦えば良かったのにと思ってしまった。もしかしたら主人公を現役復帰させるための挑発の意味もあったのかもしれないが、そうだとしたら人生がかかった一世一代の試合であまりにも余裕があり過ぎる。
悪くない展開で相変わらず音楽も良かったが、物語に起伏があまりなくて盛り上がり切れず、物足りなさが残った。主人公が負けたところで、彼の満ち足りた人生が脅かされることは大してないのだろうと思うと、そんなに熱くもなれない。
だがこれは、浮き沈みが激しく、がむしゃらだったロッキーとは違う時代に我々がいることを示しているのかもしれない。今は金持ちは金持ちのまま、そうじゃない人はそれなりに、皆がスマートなふりをして生きようとしている。
兄貴分のように一発逆転を狙うとか、成り上がるとか、そんなアメリカン・ドリームは過去の話と、あきらめの雰囲気が漂っているようにも感じる。これを、社会が安定していると見るか、硬直していると見るかは、各々の立場やマインドによってかわってくるのだろう。
スタッフ/キャスト
監督/製作/出演 マイケル・B・ジョーダン
原案/製作 ライアン・クーグラー
製作 アーウィン・ウィンクラー/チャールズ・ウィンクラー/ウィリアム・チャートフ/デヴィッド・ウィンクラー/ライアン・クーグラー/エリザベス・ラポーゾ/ジョナサン・グリックマン/シルヴェスター・スタローン
出演 テッサ・トンプソン/ジョナサン・メジャース/ウッド・ハリス/ホセ・ベナビデス・Jr/フロリアン・ムンテアヌ/アンソニー・ベリュー
音楽 ジョセフ・シャーリー
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前作 シリーズ第2作bookcites.hatenadiary.com