★★★★☆
あらすじ
ニューヨーク・ブルックリンで、両親と大勢の兄弟に囲まれて暮らす女の子。
感想
ニューヨークの下町・ブルックリンが舞台だ。冒頭で子供たちが縄跳びやコマ回しをする様子は、昔の日本の子供たちの姿と大して変わらない。こんな光景は世界のどこでも見られたのだなと懐かしい気分になった。
今や日本でこんな光景を見かけることはすっかりなくなってしまった。それに外で遊ぶ子供たちだけでなく、将棋などのゲームをする男たちやお喋りをする女たち、日向ぼっこをするお年寄りなど、特段大した理由もなく外で過ごしている大人たちも見なくなった。
大家族の中で暮らす女の子が主人公だが、最初は大家族にありがちな、皆が好き勝手に動くわちゃわちゃとした状態が断片的に描かれていく。どこか雑然としたカオス状態が続くのだが、いつの間にか気付かないうちに主人公の話に焦点が絞られていて、この混沌からすっきりとした物語へとスムーズに移行していく演出は見事だった。
中盤で主人公は、都会の騒々しい大家族の元を離れ、南部の田舎の裕福な親戚の家でしばらく暮らすことになる。そしてこの間だけ映像にゆがみが加えられ、すべてが横に細く縮んでみえる演出が施される。
猥雑ながらも伸び伸びと暮らしてた主人公にとって、穏やかで整然としたこの南部の暮らしは窮屈に感じるものだった、という事を表現しているのだと思うが、この歪んだ映像が結構な時間続くので少し気持ち悪くなってしまった。あまりにも長く続くので、途中でこれは演出ではなく見ているソフトかハードに問題が生じたのでは、と不安になってしまった。
当時アメリカで上映した時も、同じように疑う観客が多かったようで、「途中映像が乱れることがありますが、監督の意向による演出であって故障ではありません」と事前に注意を促していたそうだ。
家族と離れた事により、彼らを愛しく思う気持ちに気付いた主人公。戻った後につらい出来事を体験したこともあり、短い間に大きく成長し、家族の一員としての自覚も芽生えた。
まだ幼さが残る主人公が、小さな弟が遊びに出かけるのを見送った後、しばしブルックリンの街をしみじみと眺める姿に、じんわりと胸が熱くなった。映画の間ずっと流れ続けるクラシックなソウルミュージックの名曲たちも効果的だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/出演 スパイク・リー
出演 アルフレ・ウッダード/デルロイ・リンドー/ゼルダ・ハリス/デヴィッド・パトリック・ケリー/ホセ・ズニーガ/イザイア・ワシントン/ヴォンディ・カーティス=ホール/マニー・ペレス
音楽 テレンス・ブランチャード