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「出来ごころ」 1933

出来ごころ(活弁入り)

★★★★☆

 

あらすじ

 長屋に息子と暮らす中年の男は、ふとした出来心で住む所がなくなり困っていた若い女の世話をしてやる。「喜八もの」第1作。キネマ旬報ベスト・ワン作品。モノクロ・サイレント映画。

 

感想

 子持ちの中年男が若い女に恋心を抱く物語。貧乏長屋が舞台になっていることもあり、落語を映像化したような印象の映画だ。だがいくつかの小咄をただ並べているだけでなく、時には伏線にしたりして、ちゃんと話につながりを持たせているのが上手い。ただこれも落語的と言えば、落語的なのだが。主人公が自分の息子をつかまえて「これだから貧乏人の子供は嫌だ」と嘆くのは笑えた。

 

 登場人物の中では、長屋の隣人で主人公の友人を演じる大日方伝(大日方傳)がとても印象に残る存在感を放っていた。昔ながらの男前で、無精ひげなのに笑うと爽やか、背も高くてまるで阿部寛のようだった。貧しい庶民が暮らす下町の世界では異質な存在だったが、彼は九州の裕福な名家の出身だそうで、やはり育ちの良さは滲み出てしまうのものなのかと思ってしまった。

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 主人公が恋した若い女はその友人に恋をしている、という割とよくある三角関係が描かれていく。最終的には予想通りの展開になっていくのだが、はじめに友人が女を拒絶するのがよく分からなかった。主人公が世話をしてやった女で気があることも知っていたから遠慮したのだろうか。だが最後は主人公のために尽くしたことでもう義理立てすることはないと判断したという事なのだろう。

 

 

 最初は可笑しく、次第にいい話になっていく人情噺。泣かされる展開になりそうだとは思っていたが、まさか主人公でも友人でも女でもなく、近所の床屋にとどめを刺されて泣かされることになるとは思わなかった。あまりにも不意過ぎて、虚を突かれて思わずグッと来てしまった。貧しくも善良な人々が、特定の誰かというわけではなく、みんなで互いに助け合って暮らしている。優しい世界だ。

 

 最後は少しクスっと笑わせて、この「喜八もの」が寅さんの原点だと言われることがあるのもよく分かるような人情喜劇だった。

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スタッフ/キャスト

監督/*原案

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*ジェームス槇 名義

 

出演 坂本武/大日方伝/伏見信子/突貫小僧/谷麗光

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*ノンクレジット

 

出来ごころ - Wikipedia

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