★★★☆☆
あらすじ
ある映画監督が賭け事として行っていた有名人の死亡予想ゲームで、リストに挙げられていた有名人が次々と殺されていく事件が起こり、犯人を捜すダーティハリー。原題は「The Dead Pool」。
感想
アジア系の相棒が登場したり、彼がカンフーを披露したりと何となく当時の世相が表れているような映画だ。アジアに勢いがあった時代といえるかもしれない。こういう波が何度か訪れて、少しずつハリウッド映画におけるアジア系の存在感が増していったのだろう。最近ではだいぶ見慣れた存在になってきた。
今回のダーティーハリーは、まず投獄したギャングの恨みを買って命を狙われ、さらに有名人死亡予想リストに名前を挙げられたことから命を狙われと、命を狙われまくっている。だがいつものように怯むことなく、向かってくる敵を次々と撃ち殺していく。相変わらず激しい。
しかしこれがシリーズ最終作になったことを考えると、こうやって主人公が犯罪者を殺してしまうのは、時代にそぐわなくなったのかなと思わなくもない。敵は犯罪者とはいえ人権があり、それは守られなければならない、という空気になっていたのかもしれない。こうやって少しずつ世の中はアップデートされていく。
それから途中でマスコミを呼んで焼身自殺を図る男が登場するが、これも今だとスマホで自撮りでネット中継しそうだ。それに自殺ではなく、無差別の銃乱射事件を起こすかもしれない。
かつてマスコミには、世の中の注目を集められる利点があった。今はネットで自ら情報発信できるようになり、世間にとって彼らを利用するメリットがなくなってしまった。その代わりに都合の悪いことを広められるデメリットばかりが目立つようになり、世間とマスコミとの持ちつ持たれつの関係が崩れてしまったのかもしれない。現在は企業や政治家などが平気で彼らを避けるようになったような気がする。
なんだか映画を見ながら色々と現在との時代の違いを考察してしまったが、映画自体はアイデア豊富でなかなか楽しませてくれる。マフィアが主人公の身を心配してなぜかボディガードを付けてきたり、ラジコンカーとカーチェイスをする羽目になったりと、面白いシーンがいくつもあった。カーチェイスシーンは、車を運転しながらラジコン操作をするのは難易度が高すぎだろうと思ったが、意外と迫力があって見応えがあった。
それからジム・キャリーがロックスター役で出演していて、もうこの時代から活躍していたのかと驚いた。みなさんご存知ジム・キャリー、という扱いではまだなかったが。でもこの時で20代中盤だから、そんなに驚くことではないのかもしれない。
クライマックスは主人公の代名詞ともいえる拳銃44マグナムではなく、別の武器を使って敵にとどめを刺す。意外性があって気分が盛り上がったし、シリーズの終焉を象徴しているようにも見えた。ただこの大事な場面で撮影スタッフの影が映り込んでいるシーンに気づいてしまって、だいぶ萎えてしまったが。
スタッフ/キャスト
監督 バディ・ヴァン・ホーン
出演
リーアム・ニーソン/エヴァン・C・キム/パトリシア・クラークソン/デヴィッド・ハント/ジム・キャリー
音楽 ラロ・シフリン
撮影 ジャック・N・グリーン
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