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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「EM エンバーミング」 1999

エンバーミング

★★☆☆☆

 

あらすじ

 遺族に依頼され、転落死した男子高生の遺体の修復・保存(エンバーミング)を行っていた女性は、事件に巻き込まれていく。

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 高島礼子主演、松重豊、鈴木清順ら出演。青山真治監督。96分。

 

感想

 遺体の修復・保存を行う女性が主人公だ。序盤は転落死した男子高生の遺体を修復する過程が丁寧に描かれていく。脳みそが飛び出した頭蓋骨を修復し、目玉をはめ込むなど、その様子はかなりグロテスクだ。しかし、それでもまだ遺体はきれいな方で、実際の遺体はもっとぐちゃぐちゃのような気もする。

 

 主人公が作業を行う遺体の身元は、宗教団体の庇護を受ける二世議員の子供だ。自殺か事故かと見られていた死因に他殺の可能性が出てきたり、なぜか教祖にエンバーミング中止の圧力をかけられたりと、なにかと厄介なことばかりが起きる。そしてほぼ作業が完了したところで、遺体の頭部が切断され、何者かによって持ち去られる事件が起きてしまった。

 

 

 体面を気にする議員に責められた主人公は、刑事と協力して頭部の行方を探すことになる。その過程で主人公は、闇の臓器移植ネットワークやそこで活躍するスゴ腕の元医師、さらには行方不明となっている自身の父親の情報を知る。また、死亡した男子高生の家族や恋人にまつわる秘密も明らかになる。これに加えてさらに、四重人格だの双子だの、実は血がつながっているだのいないだの、ややこしい情報を次から次へと放り込んでくるので、だいぶお腹いっぱい感がある。

 

 やがて頭部を持ち去った犯人も判明する。だが犯人の動機も目的もまったく腑に落ちない。すでにほぼ修復されていた遺体から頭部を切断しておいて、きれいに修復して欲しいと望むのはどういうつもりなのか、そしてそうしたとして何なのか、犯人の意図がさっぱり理解できない。

 

 彼の存在を永遠のものにしたい、みたいなことを言っていたが、普通そういう時は、いつか滅びる肉体ではなく、魂や脳に執着しそうなものだ。それなのにソフトではなくハードを何とかしたいとこだわるのは珍しいような気がする。

 

 自分と彼を永遠のものにする、と言っていたので、体をつないで心中するようなものなのかもしれない。あるいは常にそばに感じていたいからという阿部定的なものなのか。

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 いざ終わってみれば、たくさん詰め込まれた複雑な要素はあまり関係なかったような気がする。また、グロテスクな遺体修復映像以外は怖さも見どころもなく、何をやりたかったのだろうと首をひねってしまう映画だ。犯人の心情が理解できていればまた印象は違ったのかもしれないが、あまり面白みを感じられない。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/編集/音楽 青山真治

 

脚本 橋本以蔵

 

原作 EM(エンバーミング) (幻冬舎文庫 あ 7-1)

 

出演 高島礼子/柴俊夫/松重豊/三輪ひとみ/松尾政寿/松尾政寿/本郷功次郎/鈴木清順/早川純一/古島弘美/浅見小四郎/高川裕也/新井康弘/工藤俊作/吉田朝/大川ひろし/笠原紳司/永島浩二/山本尚明/氏家恵/島田潤/島田充/(声)隆大介

 

 

 

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