★★★☆☆
あらすじ
ポーランドの戦火を逃れてアメリカにやってくるも、強制送還されそうになった女性は、ある男に助けられて彼の元で暮らし始める。
マリオン・コティヤール主演、ホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナー出演。ジェームズ・グレイ監督。原題は「The Immigrant」。117分。
感想
アメリカに移民としてやってきた女性が主人公だ。入国審査に引っ掛かり、強制送還されそうになっていたところを興行師の男に助けられる。彼は住むところや仕事まで世話してくれてずいぶん親切だなと思ったが、やがては彼女をステージに立たせ、しまいには売春までさせる普通にひどい男だった。うまい話には裏がある。
他に行くところも仕事もなく、一緒に来るも入国時に病気で収容隔離されてしまった妹も心配な主人公は、彼に従うしかない。だが男にとっても彼女たちは必要な存在で、不思議な共存関係が出来上がっている。男が基本的に女たちに紳士的に接しているのが印象的だが、彼も元は移民で、彼女たちの境遇がよく理解できるからなのだろう。
男は主人公に気があるようだが、主人公は単なるビジネスの関係だと完全に一線を引いている。そしてそんな微妙な関係の二人の前に、ジェレミー・レナー演じる魅力的なマジシャンが現れ、次第に彼らの日常に狂いが生じていく。喧嘩して劇場から追い出され、路上で客引きするようになるなど、主人公らの先行きに暗雲が立ちこめるようになった。
二人の男の激しい対立は、ついに悲劇を招く。事前の小競り合いや拳銃のくだりの伏線が効いて、ハッとさせられる鮮烈なシーンになっている。
主人公を見ていると、戦争を逃れ、新しい場所で新たな生活を始めようとしているだけなのに、どうしてこんなつらい思いをしなければならないのだと思ってしまう。頼ろうとした親戚に主人公が裏切られるシーンが途中にあるが、彼らも彼らで苦労して手に入れた居場所を守るのに必死だったのだろう。その気持ちはよく理解できる。他に行く当てのない彼らは、時には裏切り、時には意に沿わぬことまでして、この場所にしがみつき、必死に生きている。それがいけないことなのか?と問われたら、何も言い返せない。
そんな移民の子孫たちが今、移民排斥に夢中になっているのかと思うと複雑な気持ちになる。アメリカなんてネイティブ・アメリカン以外は皆移民の子孫だ。歴史から学ばないのか、そもそも歴史を知らないのか。ピュアな愛国者は、自分の中で都合よく歴史を脚色し、ファンタジーにしてしまうから困る。
きれいごとだけでは語れない移民の辛さや苦労が伝わってくる物語だ。だが、マリオン・コティヤール演じる主人公の美貌あってこその話だよなと思ってしまう部分はある。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ジェームズ・グレイ
脚本 リチャード・メネッロ
出演 マリオン・コティヤール/ホアキン・フェニックス/ジェレミー・レナー/ダグマーラ・ドミンスク/アンジェラ・サラフィアン

