★★★☆☆
あらすじ
映画撮影のために家を借りて暮らしていた女優は、娘が異常な言動をするようになったことに動揺する。
ウィリアム・フリードキン監督。アカデミー賞脚色賞、音響賞。122分。
感想
イラクの遺跡発掘現場から映画は始まる。昨今の一般的なホラー映画とは違うしっかりとしたつくりの映像だ。当時の映画の標準なのかもしれないが、このまま壮大な歴史叙事詩や文芸ロマンが始まってもおかしくない雰囲気がある。
謎の遺物の発見や巨像との対峙、心臓の病気、事故の危険など、不穏な気配をたっぷりと醸成して、舞台はアメリカに移る。娘と共に暮らす女優がメインで描かれるが、その他にも信仰に揺れる神父の物語も並行し、それらが少しずつつながっていく。これらもどっしりと安定感のある展開だ。
天井で物音がしたり、勝手に窓が開いていたりと、不気味な気配はありながらも何事もなく過ごしていた女優の日常に、突如異変が起きる。娘が変調をきたすのだが、ベッドが飛び跳ねるような映像はインパクトがあった。少女に何の前兆もなかっただけに驚かされる。
娘は医者の診断を受けるが、症状は悪化していく。ただどう考えても少女が自分でどうこうできるものではなく、病気で済ますのは無理があるだろうという思いは強かった。最初は医者も母親の説明だけで判断するしかなかったので仕方がないが、実際に少女の異変を目の当たりにしても病気で押し通そうとするのは駄目だろう。欺瞞だ。
病院での検査や処置のシーンはどこか恐ろしげで、悪魔だけでなく現代医療の怖さも描こうとしているのかもしれない。医学も決して万能ではない、信頼できないという疑念は常にあり、それが現在のスピリチュアルブームや陰謀論の隆盛を生んでもいる。だが極端に走らず、常に情報を更新していけるのなら、その態度も悪くはない。
声や表情まで違ってしまう少女の変貌ぶりは見るだに怖ろしい。だが何よりも怖いのは、少女が信じられないくらい口汚い言葉を吐くことかもしれない。公共の場で幼児が意味も分からずに卑猥な言葉を連呼している場面に遭遇してしまったような居たたまれなさがある。分かりやすくやってはいけないことをやっていて、悪魔的だ。
行き詰まった医者の提案により、女優は悪魔祓いを受けることを決意する。本当に悪魔を払うのではなくて、精神療法の一環として行う、という医者の説明にはなるほどなと感心させられた。一旦相手の物語に乗ってあげて、相手の望む方法で解決に持っていくのは、特に心の問題では有効だろう。
そして悪魔祓いが始まる。神父たちの吐く白い息や少女の暴れっぷりが儀式の壮絶さを表現していて、迫力たっぷりだ。ベッドが完全に宙に浮いた時にはちょっと笑ってしまったが、恐怖と笑いは紙一重だ。激しさの中に静寂もあり、たたみかけるような結末には思わず息をのむ。
重厚な雰囲気のホラー映画だ。古い映画ということもあり、多少のもっさり感はあるが、後続に多大な影響を与えた映画として一見の価値はある。
そういえば有名な「スパイダーウォーク」が無かったなと思っていたら、あれはディレクターズ・カット版で挿入されたシーンらしい。
スタッフ/キャスト
監督 ウィリアム・フリードキン
脚本/製作 ウィリアム・ピーター・ブラッティ
出演 リンダ・ブレア/エレン・バースティン/ジェイソン・ミラー/マックス・フォン・シドー/リー・J・コッブ/ジャック・マッゴーラン/ルドルフ・シュンドラー/ロバート・シモンズ/マーセデス・マッケンブリッジ(声)
音楽 マイク・オールドフィールド/ジャック・ニッチェ
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