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「復讐するは我にあり」 1979

復讐するは我にあり

★★★★☆

 

あらすじ

 詐欺や殺人をくり返しながら逃げる逃亡犯。実話を基にした映画。キネマ旬報ベスト・ワン作品。140分。

西口彰事件 - Wikipedia

 

感想

 強盗殺人事件を起こし、全国を逃亡する男の姿を追う物語。犯人を演じる主演の緒形拳は、地位がある人間のように振る舞って人を信用させたかと思うと、急に相好を崩して相手に取り入ったりするような、振り幅の大きな演技が見事だ。特に詐欺をするときの堂々とした振る舞いはいかにもで、偉そうなふりをしていれば勝手に相手は勘違いして騙されしまうのだという事がよく分かる。

 

 全国を転々とする主人公は、各地で様々な女と関わる。それを演じる小川真由美をはじめとした女優たちも皆良い演技を見せていて、見ごたえのある競演となっている。そんな中で、主人公の妻を演じた倍賞美津子がとても印象的だった。彼女はどこか男っぽさを感じさせる女性といったイメージだったが、この映画の中ではとてもいい女感が出ている。特に温泉での混浴シーンは色っぽくて、ドキリとさせられた。

 

 主役と女優たちとの迫真の演技に、割って入って来るのが三國連太郎だ。主人公の父親役で、加害者の親として申し訳なさそうに小さくなっているだけの地味な役かと最初は思っていたのだが、徐々にその存在感を示し始める。彼は一筋縄ではいかない癖のある演技を常に見せていて、どのシーンでも爪痕を残す。この人は逆にモブキャラは出来ないのかもしれない。そして、ラストにロープウェイで見せた呆けた表情も良かった。倍賞美津子とのエンディングの一連のシーンは強く印象に残った。

 

 

 ところで、タイトルがどうして「復讐するは我にあり」なのかがよく分からなかったのだが、聖書の一節から取ったものらしい。裁きは神に任せて、とにかく男の取った行動をフラットな視点で見てみようという事か。あまり主人公の動機は描かれていないのだが、根底にはキリシタンとして自分を律して生きる父親に対する反発があったように思える。

 

 主人公は父親とは正反対に、自分はやりたいことを存分にやって、納得してそれに見合った罰を受けようと開き直っているように感じられた。こういう神様の利用の仕方もあるから宗教は時に困る。主人公の姿と、まわりの人物たちの浮き彫りになってくる人間の業を眺めていたら、次第にずしりと胸にこたえてくるものがあった。満足感を覚える映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督    今村昌平

 

原作 復讐するは我にあり 改訂新版 (文春文庫)

 

製作    井上和男

 

出演 緒形拳/三國連太郎/ミヤコ蝶々/倍賞美津子/小川真由美/清川虹子/殿山泰司/絵沢萌子/白川和子/フランキー堺/浜田晃/火野正平/佐木隆三/河原崎長一郎/菅井きん/加藤嘉/梅津栄

 

復讐するは我にあり - Wikipedia

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