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「合葬」 2015

合葬

★★★☆☆

 

あらすじ

 江戸城明け渡し後の幕末。新政府に一矢報うために彰義隊に残った青年とその仲間たち。

彰義隊 - Wikipedia

 

感想

  主君であった徳川慶喜のために新政府に一矢報いようと決心した主人公。普通に考えれば美談ということになるのかもしれないが、主君が恭順を示している中でそんなことをすれば、主君に迷惑をかける可能性があるわけで、単なる独りよがりのナルシシズムにしか見えなかった。

 

 しかも追い詰められて戦わざるを得ない状況に追い込まれているわけでもなく、ただ自分たちの気持ちがおさまらないから、というのがたちが悪い。まったく論理的でなく、ただただ感情論で、振り上げたこぶしのやり場を無理やり探している。

 

 

 これは行き詰った組織でよく見られる光景だ。戦争末期の大日本帝国もこんな感じだった。しかし、感情的に自分たちの死に場所を探している組織ほど迷惑なものはない。静かに潔く死んでくれればいいのに、無駄に騒ぎ立てて粘り、絶対に周囲を巻き込もうとする。この映画では、意見の異なる仲間を斬り、無益な戦争で新政府軍側にも多くの犠牲を出している。どうせ死ぬからと自暴自棄になり、女郎屋通いの放蕩をしたりとやりたい放題で、我儘すぎて全然共感できないし、お前らの滅びの美学なんか知るか、という気になってしまった。

 

 まあしかしこれは若さゆえという事もあるのだろう。思い詰めた主人公、流されて彼についていくだけの男、反発しながらも勝手に気分が盛り上がってしまって勢いで参戦してしまう男と、三者三様の若者が登場する。どのタイプもどこにでもいそうな若者の姿で、そんな彼らの青春模様が描かれる。

 

 ただ、それぞれのストーリーが断片的過ぎるし、彰義隊や周辺人物の話も中途半端で、物足りなさが残った。それでも、上映時間が90分未満で、超大作にする気はさらさらなかったのだろう事は評価できる。これでもっとうまく仕上げることができていたら、かなり好感度が高かったはずだ。

 

 それから、柳楽優弥演じる主人公の、友人の説得にも懇願にも揺らぐことのない頑なさがとても印象的だったが、最後に急に情緒のある話が出てきて少し呆気にとられてしまった。「月に誘われて」とかめちゃくちゃ良い台詞で、良いエピソードだなとは思ったが、着地点はそこなのか?と意外だった。それならそれで、普通に最初からそういうふうに描いた方がよかったような気がする。それでもやっぱり冷静に考えると、この主人公は自分のやりたいようにしかやらない本当に我儘放題な奴だったのだな、という思いがさらに強くなってしまうが。

 

スタッフ/キャスト

監督 小林達夫

 

原作 合葬 (ちくま文庫)

 

出演 柳楽優弥/瀬戸康史/岡山天音/オダギリジョー/門脇麦/隆大介/峯村リエ/りりィ/(声)カヒミ・カリィ

 

音楽 ASA-CHANG&巡礼

 

合葬

合葬

  • 発売日: 2016/03/02
  • メディア: Prime Video
 

合葬 - Wikipedia

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