★★★☆☆
あらすじ
引退した著名な音楽家は、友人の映画監督らもいるスイスの高級リゾートスパで余暇を過ごしていた。
マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズら出演。原題は「Youth – La giovinezza」。119分。
感想
音楽家として名声を得るも引退し、今はスイスで余暇を過ごす老人が主人公だ。代表作を指揮して欲しいとの英国王室からの依頼を断るシーンから物語は始まる。
彼が過ごすのは、友人の大物監督や有名俳優など、各国のセレブたちが集う高級リゾート地だ。マラドーナらしき人物もいる。マッサージやコンサートを楽しみながら優雅に過ごす彼らだが、その表情には明るさがない。なにかを成し遂げてしまった後の虚しさや過去の栄光で生きる憂鬱が、彼らをそうさせているのかもしれない。
そんな場所で過ごす主人公の日常が描かれていく。それぞれのつながりがあるのかないのか分からないような、どこか抽象的なエピソードが続く。そんな中では、夫に不倫された理由をしつこく知りたがる娘に、それを知っている主人公が困惑しながら話さざるを得なかったシーンは笑えた。父親が娘に絶対に言いたくないようなことを言わされている。その後、気まずい父娘が互いにフォローし合う様子は微笑ましかった。
これら漠然としたエピソードは、邦題からイメージする人生の総決算ではなく、原題の「Youth(若さ)」を描いているのだろう。当然のようにある若者の若さだけでなく、過去よりもこれからを見つめる中年の若さ、年老いても映画製作に情熱を傾けるような若さなど、いろんな「若さ」がある。主人公の娘のように、夫に悪口を言われて「まだやれるわ」と発奮する若さもあるし、主人公のように過去を振り返ることで蘇る若さもある。
人間が老いるのは年を重ねたからではなく、そんな若さを失ってしまうからなのかもしれない。若さを保っていた友人の映画監督が、求められていないことを知って一気に老け込んでしまったのとは対照的に、すでに老いたつもりでいた主人公がまだ求められていることで若さを取り戻したのは皮肉だ。
だがそれも一時的なもので、「健康なので、まだまだ生きなければならないらしいぞ」と困惑しているようにも見える。老いて行く中で「若さ」とどのように付き合っていくのか。人生の黄昏時における厄介な問題となりそうだ。
人生の機微を感じるシーンにしみじみとはするが、そこまでグッとくることはなかった。もっと年齢を重ねてから見ると、また違う印象になるのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 パオロ・ソレンティーノ
出演 マイケル・ケイン/ハーヴェイ・カイテル/レイチェル・ワイズ/ポール・ダノ/ジェーン・フォンダ/スミ・ジョー/ヴィクトリア・ムローヴァ


