★★★☆☆
あらすじ
念願のマイホームに引っ越した一家だったが、次第に不協和音が生じるようになる。
小林克也、倍賞美津子、植木等ら出演、石井聰互監督。小林よしのり原案・脚本。106分。
感想
念願のマイホームを手に入れ、張り切る男が主人公だ。どこか様子のおかしい家族もこれで良くなるだろうとホッとしている。ただ、受験ノイローゼ気味の長男は分かるが、他の家族が病んでいることは分かりづらかった。単に新居でハイになっているだけかと思っていた。
長男夫婦と喧嘩して家出した父親が転がり込んだことから、家族に不協和音が響き始める。部屋数が足りず、皆が落ち着かない気分でストレスを感じるようになった。なんとか家族をなだめつつ、皆が追い出したがっている父親を必死に守ろうとする主人公の姿は、涙ぐましい。
ただ、ここでも彼が最初に提案した、庭にプレハブを建てる対策をすれば良かったのに、と思わなくもない。問題にしていた犬小屋はなんとかなるはずだ。それに、息子の部屋だけ妙に広いのも気になり、工夫次第で何とかなるのではと思ってしまう。だが、周りが見えなくなってしまった主人公は暴挙に出る。おかしくなってしまった彼が会社から家まで戻ってくるときの、疾走感ある映像は見応えたっぷりだ。
皆がどんどんとおかしくなっていく中、どうなっていくのかと思ったら、家族で殺し合いが始まる展開となるのは面白かった。しかも、それぞれがキャラクターに合った武器を手に戦う。女子プロレスラーの格好で戦う工藤夕貴演じる娘や、めちゃくちゃ強そうな倍賞美津子演じる母親など、女性陣の戦いぶりが良い。白熱の戦いから穏やかなエンディングに至る終盤は、密度の濃い内容だ。
家族のためにと掘った穴に皆が落ちていくのが象徴的だったが、良かれと思って頑張っているのに、それが仇になることもある。だが、簡単には離れられない家族は、一緒にご飯を食べるだけでなし崩し的に元のさやに納まったりする。「家族とは家だ」と執着していた主人公が、そうではないことに気付き、逆に家族さえしっかりしていれば家など何だって構わないことを示す結末は、清々しさがあった。
家族の不協和音や家庭内暴力を描いた映画だ。80年代は似たようなテーマの作品が多いが、豊かなのが当たり前になり、逆に不満を覚えるようになった時代ということだろうか。ただ、校内暴力もそうだが、劇的な解決策があったわけでもないのに、その後目立たなくなったのは不思議だ。依然として起きているが慣れて気にしなくなったのか、皆が自然と対処法を身につけて乗り越えたのか。もし乗り越えたのだとしたら、今社会にある諸々の問題も自然と乗り越えてしまうのかも、と変な期待をしてしまう。
主演の小林克也は、平凡で冴えない典型的な中年男といった風貌でありながら、ひとたびキレると悪い意味でヤバいという、いかにも日本人にありがちなキャラクターを好演している。この時代に重宝されたのもよく分かる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 石井聰互
脚本/原案 小林よしのり
脚本 神波史男
製作 長谷川和彦/山根豊次/佐々木史朗
出演 小林克也/倍賞美津子/有薗芳記/工藤夕貴/植木等
音楽 1984
撮影 田村正毅
編集 菊池純一

