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「漁港の肉子ちゃん」 2021

漁港の肉子ちゃん

★★★★☆

 

あらすじ

 何度も男で失敗するも明るく笑い飛ばしながら生きる大柄な母親「肉子ちゃん」と、小さな漁港のある町で暮らす小学生の娘。

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感想

 何度も男で失敗し、各地を転々とするうちに北国のある漁港のある町にたどり着いた「肉子ちゃん」の姿を、小学生の娘の目を通して描いている。肉子ちゃんは太っていて頭が悪く、だけど明るくたくましく、人にやさしく生きている。ちょっとキャラクターをデフォルメしすぎかなと思わなくもないが、これぐらいやらないと陰の部分が出てしまうのかもしれない。ただずっと彼女と娘の声がしっくり来ず、これでいいのか?とずっと気になってしまった。

 

 一方の主人公である娘は、同級生たちとのいざこざなど小学生らしい悩みを抱えながらも、そんな母親を見てきたからか、とても大人びている。無邪気な母親を冷静に見守っている。この映画では子供に子供らしさを求めていないのが良い。「子供らしくあれ」なんて、「扱いやすい人間でいろ」と言っているのと変わらない。子どもだってちゃんと考えている。

 

 

 母娘を見て誰しもが浮かべるであろう疑問を放置したまま、物語は進む。そして終盤で突然トーンが変わり、それを明らかにする演出は劇的だった。不意に知らされた真実に思わず目頭が熱くなってしまった。このシーンは、何からどう伝えるべきか混乱する母親をリードするように、主人公が主導権を握っているのが印象的だ。子どもが大人を助けている。

 

 映画では頭の悪い母と賢い子供という分かり易い構図になっているが、現実世界でもきっと同じことが起きている。いつの時代も若い世代が、古い世代の見たことがない世界まで皆を導くものだ。ベビーカーの中で泣き叫ぶ赤ちゃんも、五年後には古い世代を助ける存在になっていると想像できれば、世の中はもっと優しく、そしてより良いものになっていくはずだ。大人は肉子ちゃんのように、人間らしく生きるための基本姿勢さえ伝えられたらそれでいい。あとは勝手に賢く育つ。

 

 子供を信じる姿勢が感じられて好感が持てる映画だが、子役に吉田拓郎の「イメージの詩」を歌わせるのはさすがにやり過ぎだ。それをチョイスし、子供に歌わせようとする大人のあざとさが透けて見える。

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スタッフ/キャスト

監督 渡辺歩

 

原作

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製作 明石家さんま

 

出演(声)

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Cocomi/花江夏樹/中村育二/石井いづみ/山西惇/八十田勇一/下野紘/マツコ・デラックス/吉岡里帆/ゆりやんレトリィバァ/岩井ジョニ男/オラキオ/チャンス大城/稲垣来泉/滝沢カレン/宮迫博之

 

漁港の肉子ちゃん - Wikipedia

 

 

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