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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「同胞」 1975

同胞

★★★★☆

 

あらすじ

 岩手の村で青年会の会長をする青年は、東京の劇団職員の女性から、村で舞台の上演をしないかと持ち掛けられる。

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 倍賞千恵子、寺尾聰ら出演、山田洋次監督。タイトルの読みは「同胞(はらから)」。127分。

 

感想

 片田舎の若者たちが、舞台公演の実現に向けて懸命になる様子が描かれる。劇団職員の女性が、主人公である青年会長の元にやってきたところから物語は始まる。

 

 いきなり現れた職員が、「公演するから金をくれ」と言い出した時は、相手にリスクを負わせるアコギな話かと思ってしまったが、イベントにギャラを払って来てもらうと考えれば、どこでもやっていることだ。要は興行で、払ったギャラ以上の収益があれば儲かるし、そうでなければ損をする。

 

 

 主人公は青年会のメンバーを集めて、劇団を呼ぶかどうかで話し合う。儲かりそうだからとか、文化的に意義あることだからとかではなく、単にそういう話を持ち込まれたからという理由だけで真摯に話し合うところがなんとも善良だ。いったん断ろうとした時も、ただその旨を伝えればいいだけなのに、どうやったら相手を傷つけずに済むかと一生懸命に考えている。

 

 メンバーの若者たちは、文句を言ったり怒ったりしながらもちゃんと言いたいことは言い、真剣に議論している。金銭的なリスクもあるので不安だが、やれるのならやりたいよねと、前向きな雰囲気がある。最終的には気持ちの問題だからと、勢いだけで開催を決めてしまったのは大丈夫か?と思ってしまったが、そういうのが大事な時もある。

 

 過疎化していく田舎で農業を続けるか、それとも都会に出ていくかと悩みながらも、今はここでやれることをやろうと頑張る若者の姿に心打たれる。

 

 それから彼らが皆、颯爽と車を乗り回しているのが印象的で、高度経済成長期らしい勢いを感じる。これから日本はもっと良くなると、当然のように信じている。田舎の若者でも表情は明るい。

 

 公演の当日、村人たちがぞろぞろと集まってくるシーンや、劇を見て皆で笑い、時に泣き、自然と拍手が起きるシーンもいい。主人公のスピーチにもあったが、コミュニティの大切さを実感する。共に笑い、共に泣ける瞬間があれば、共同体の結束は強まる。

永遠にともに - コブクロ

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 人々の善良さに寄りかかり過ぎているきらいがあり、共産主義ぽくもある。しかし少なくとも、相手が善良だと信じられる社会は理想だろう。他人はすべて敵とみなし、個人戦を繰り広げる社会はしんどい。どうせ無理にしても、せめてそんな世界を目指す世の中であって欲しいものだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/原作

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脚本 朝間義隆

 

出演 倍賞千恵子/寺尾聰/下條正巳/大滝秀治/井川比佐志/三崎千恵子/下條アトム/杉山とく子/今福正雄/赤塚真人/市毛良枝/土屋亨/河合進/岡本茉利/笠井一彦/仲恭司/木村賢治/羽生昭彦/戸川美子/原浩/木村晃子/木村祥子/田村勝彦/松尾村青年会員/統一劇場劇団員

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同胞

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同胞 (映画) - Wikipedia

 

 

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