★★☆☆☆
あらすじ
売春島の置屋で呼び込みをしている若い男は、本家の腹違いの兄に冷たい仕打ちを受けていた。
佐藤二朗原作の舞台を自ら脚色・映画化した作品。山田孝之、仲里依紗、坂井真紀ら出演。113分。
感想
売春島の置屋を舞台にした物語だ。妾の子で呼び込みをしている主人公は、本妻の子で置屋の主人である兄に冷たい仕打ちを受けている。彼らの父親が、本妻ではなく妾と共に心中したことがその原因のようだ。
兄は、父親が本当に愛していたのは母親ではなく妾だ、だから自分は偽物の愛で生まれてきた人間なのだと劣等感を抱いている。両親が自分を置いて逝ってしまったことも心の傷になっているのだろう。それが彼の自己肯定感を低くし、人生に虚無感を与えている。本物の愛から生まれた弟と妹に冷たく当たり、売春婦たちに侮蔑的な態度を取るのもそのせいだ。
兄弟の愛憎劇に売春婦たちの人生模様が絡まってドラマが紡がれていく。物語の構造は大体そんなところだろうと理解できたが、残念ながらあまり心に迫るものはなかった。かたちは分かるが中身が見えてこない、といったところだろうか。
一番大きな問題は、描かれるべきバックグランドが描かれていないことだ。例えば両親の心中は、実行時の様子は説明されるが、なぜそうしたのかは説明されない。子供たちがその後順調に育っているところを見ると経済的に困窮してとかではなさそうで、だとしたら突発的だったのか。それが曖昧なまま状況だけ説明されても釈然としないものがある。そもそも何で心中したのかと疑問は残り続けるし、兄がそれをどう解釈していたのかも分からない。
また売春婦たちの身の上も詳しくは分からない。彼女たちが自分の意志で働いているのか、あるいは借金を抱えて身売りのような状態になっているのか。これがどちらかで、彼女たちの見方はだいぶ変わる。自らの意志ならキツければ辞めればいいだけだし、そうでないなら頑張るしかない。
この世のどん詰まりのような僻地の島でそんなことをしている時点で大体察することが出来ないわけでもないが、ある程度の情報は欲しかった。主人公兄妹も同様で、どういう状況で置屋に縛り付けられているのかが分からない。いくらでも抜けられるような気がして、話に集中できないところがあった。
クライマックスも、真実が明らかになったところで何がどう問題なのか、登場人物たちが何に反応しているのか、そのポイントがよく分からずに全然ピンと来ない。ことの発端となった兄と妹の関係も、その前に主人公とそんなやりとりをしていたのでそういう世界観なのだと思っていた。
そもそも兄が、いい歳こいて本物の愛がどうこうと言っているのは流石にどうなの?と思ってしまう。子どもの時のトラウマだから引きずってしまうのは分かないでもないが。二人の女性を同時に愛することだって出来る、くらいのことは、実感として分かってきそうなものだ。
それだけ彼の心はまだ子供のままで、成長できていないということなのかもしれない。まずは現実をしっかりと受け止めることが必要だ。
伝わらないドラマが繰り広げられる映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/出演 佐藤二朗
原作 舞台劇「はるヲうるひと」 佐藤二朗
出演
仲里依紗/今藤洋子/笹野鈴々音/駒林怜/太田善也/向井理/坂井真紀/大水洋介
