BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「二十才の微熱」 1993

二十才の微熱

★★★★☆

 

あらすじ

 夜はゲイバーで働く大学生。

 

感想

 仕事も他人との付き合いも淡々として冷めた大学生が主人公だ。そんな彼が、大学の先輩の女性や仕事の後輩と交流する中で少しずつ変化していく。多少特殊ではあるが、青春映画の一種と言える。

 

 とりあえずは全く馴染みのなかった主人公たちの世界が興味深い。すべてがこの通りではないのだろうが、なんとなくフワッとしか知らなかった彼らの世界は、こんな風になっているのかとその解像度が増した。そしてもしかしたら自分が思っているよりも、この世界は身近で大きなもののような気がしてきた。映画でもそんなシーンがあるが、誰も自分はこんな人間ですとカミングアウトしながら歩いているわけではないので、気付くわけがないのは当然か。

 

 

 主人公が先輩の女性の家でその家族と共に食事するシーンがあるが、ガチャガチャとした庶民の家らしさがよく表れていて面白かった。他人の家に行くとこんな雰囲気を味わうことがよくある。気を使って妙によく喋るし、何かと席を立って忙しなく、落ち着かないことこの上ない。

 

 その茶番が終わったと思ったら、今度はクライマックスで修羅場が待っていた。しかもなんだこれ?と思ってしまうような男三人によるグダグダな修羅場だ。だが修羅場とはそういうものかもしれない。皆、もしくは誰かが複雑な心中の思いの丈をぶつけるだけの、答えを追求しない場だ。帰りたいのに帰れない、あの修羅場の嫌な感じがよく出ていた。客観的に見るとそれはどこか笑えて、そして悲しい。

 

 全体的に描き込み方が甘いような気がするが、これはこれでありだ。まだ自分のことをよく分かっていない若者らしさが良く表現されている。何もかもを分かったような気になって冷めていた青年が、少し熱を帯びた。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/出演 橋口亮輔

 

出演 袴田吉彦/遠藤雅/片岡礼子/草野康太/大河内浩

 

二十才の微熱

二十才の微熱 - Wikipedia

二十才の微熱 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com