★★☆☆☆
あらすじ
吹奏楽部の男子高生は、野球部の友人を励まそうと応援曲を作曲する。
神尾楓珠、佐藤浩市、尾野真千子ら出演。高校野球の有名な応援曲「市船Soul」を作曲した浅野大義を描く事実を基にした作品。136分。
感想
高校の吹奏楽部に入った主人公らが、北海道のYOSAKOIソーラン祭りに参加するため、踊りの練習をさせられることを知って戸惑うシーンから映画が始まる。だが、そんな重要なことを入部する前に知らされなかったのか、知らなかったにしても入部後に先輩や詳しい同級生から教えてもらわなかったのか、と疑問が次々と湧いてくる。
それに直前まで練習内容を知らされないとはどんな状況?入部初日?というか、そもそもこれはいつなの?4月?と頭の中がいきなりクエスチョン・マークだらけになる。
さらに、吹奏楽部なのにもかかわらず踊りや歌の練習させられることについて、主人公は文句を言いながらも了承して渋々従っていたが、見ているこちらは顧問教師の説明に全然納得できていないのだが、と思ってしまった。しかし、もっとちゃんと理解したいというこちらの思いなど無視して、さっさと物語は進んでいく。
次のシーンでいきなり二年後に飛んでしまうのは象徴的だったが、その後は主人公と吹奏楽部の様子が、よく見る青春ドラマの断片をつなぎ合わせたような形で描かれていく。部員同士の衝突や友情、顧問教師との信頼関係、夏の日の思い出など、前後の脈絡のない断片的なエピソードがぶつ切りで続く。要するに特筆すべきような出来事はなかったということなのだろう。「市船Soul」の作曲シーンもあったが、あっさりとしたものだった。
早足で中身がスカスカなのに、これが2時間以上も続くのかと軽く絶望していたのだが、後半は高校を卒業して大学に進学した主人公が、ガンを患い闘病生活を送る展開となり、多少はじっくりと描かれるようになった。
実話ということもあり、若くして重い病気にかかることや、手術しても何度も再発してしまうことなど、主人公の気持ちを思えば辛い気持ちになる。しかし、物語としてはいたって凡庸な難病ものだ。意外な展開は何もなく、漫然と想像通りの結末に向かっていく。おかげで終盤はだいぶ飽き飽きしてしまい、肝心の感動のクライマックスの時にはだいぶ集中力がなくなっていた。
そして、こんなに長い時間を費やした割には、友人や他の部員たちと主人公の関係が何も分からないことに驚く。よく考えれば主人公のこともよく分からなくて、もともと音楽の素養がどれくらいあったのかや、部活以外の面などは何も知らないままだ。最後の顧問のセリフで、主人公が目立ちたがり屋でいつも中心にいたらしいことを知り、そうなのかと感心したくらいだ。
違和感しかなかった冒頭のシーンが、映画のすべてを表していたと言える。雰囲気だけで、大事なことはなにも描かれていない。
ぶつ切りのエピソードだけを見せられても何も伝わってこない。しかし、一緒に過ごした関係者たちなら、描かれなかった部分を補完できて、感慨深いものになるはずだ。何周忌かの集まりで、内輪だけで故人を偲ぶ時に見るには良さそうな映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 秋山純
脚本 中井由梨子
原作 20歳のソウル~奇跡の告別式、一日だけのブラスバンド~
出演 神尾楓珠/尾野真千子/福本莉子/佐野晶哉/平泉成/石黒賢*/高橋克典/塙宣之
*友情出演
音楽 KOSEN
