★★★★☆
あらすじ
祖父の葬儀会場で父親の多額の借金が判明し、ひと騒動が起きているところに、勘当されて消息不明だった兄が登場する。
感想
主人公はつみきみほ演じる教師だ。呆けてしまった祖父とその介護をする母親、そして会社員の父親と共に暮らしている。そこに勘当されたいい加減で嘘ばかりの兄が戻ってきて、という話だ。
ただし、兄が戻ってくるまでは普通に暮らす平凡な家族だった、というわけではなく、父親は実はリストラされているのに言い出せずに借金を重ねていて、母親は介護に疲れ果てている。この手の物語にはありがちと言えばありがちな展開ではあるが、普通に見えるその裏でそれぞれが問題を抱えている。
そんな問題が遂に死んだ祖父の葬式で露見し、それをたまたま現れた兄が信用していいのか分からないままに何となく場を収めていく。その過程で、威厳を保っていた父親の頼りなさや、健気に介護していた母親の、解放感からくるのか自棄になった開き直り、兄の相変わらずの適当ぶりと、それぞれのダメさ加減があぶり出されていく。
しかしそんな中で、いつの間にか唯一まともに見える主人公が責められているような雰囲気になっていくのがなんか怖い。自分が正しいみたいな顔して人に色々意見を言ってるけど、あなたは本当にそれでいいんですかね、と問われているような気がしてくる。表立って具体的に言い立てるわけではないのに、なんとなく主人公の自信が揺らいでいくように仕向けていく演出が上手い。
最後もタイトルを絡めて上手くまとめられている。それから主人公の恋人役、手塚とおるのねちっこいキモい演技が印象的だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 西川美和
製作総指揮
出演 宮迫博之/つみきみほ/大谷直子/平泉成/笑福亭松之助/手塚とおる/絵沢萠子/寺島進/蛍原徹/菅原大吉
編集 宮島竜治