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「ひとりぼっちじゃない」 2023

ひとりぼっちじゃない

★★★☆☆

 

あらすじ

 コミュニケーションが苦手な歯科医師は、どこかミステリアスな恋人に次第に翻弄されていく。

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 井口理(King Gnu)主演、馬場ふみか、河合優実ほか出演。135分。

 

感想

 コミュニケーションが苦手な歯科医師が主人公だ。職場でも歯科助手にうまく指示を出せず、飲食店でも店員にうまく声をかけられない。皆にないがしろにされがちで、いつも居心地が悪そうだ。

 

 そんな彼なのに、彼女がいるのかよと驚いた。しかもいろんなところに出掛け、いろんな人に会っている。思っていたコミュ障とは全然違った。ただ、アクティブなのは彼女がいるからなのだろう。たった一人とつながりを持っただけでも人は大きく変わる。

 

 

 なかなか連絡が取れなかったり、普段何をしているのかよく分からない恋人に、主人公はやがて疑念を持つようになる。彼女に他の男の気配を感じるようになったからだが、それまでセリフも説明も少なく淡々と進行していたのに、急に黒沢清監督の映画のように不穏な雰囲気が出てきた。

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 そして彼女への疑念が高まり、思い悩んで異常な行動に走る主人公の様子は怪しく、江戸川乱歩的でもあった。しかし、主人公を狂わせる恋人にそれほど魅力を感じず、説得力がない。確かに彼女はミステリアスだが、だから夢中になってしまうというよりも、そういう人なのねと適度に距離を取りたくなる。いかにも部屋のドアに鍵を掛けない女だ。

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 主人公の行動は人付き合いの経験の乏しさからくるものだ。こんな自分が付き合えるのだから、相手はとても自分のことを理解してくれているのだと勘違いしてしまう。だが実際は、誰でも受け入れる人なだけだったりする。相手の心が広いだけだ。

 

 他人に甘えて生きていると翻弄されやすい。期待して待っているだけでは駄目で、自分から働きかけていくことが大事だ。ちゃんと自分の意思を伝えなければならない。コミュニケーションの基本だ。そうすることで、どこでも自分の居心地のよい環境に変えていくことができる。

 

 それを学んで小さかった声が大きくなり、母親にしっかりと自分の意思を伝えるラストは印象的だ。終盤に色々あったので思っていたほどではなかったが、それでも淡々としたペースに内容よりも次第に上映時間の長さが気になり始める。そして最終的には頭の中がそればかりになってしまう映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 伊藤ちひろ

 

原作 ひとりぼっちじゃない (角川文庫)


製作 行定勲/金吉唯彦/吉澤貴洋/新野安行

 

出演 井口理/馬場ふみか/河合優実/相島一之/高良健吾/浅香航大/長塚健斗/じろう/盛隆二/森下創/千葉雅子/峯村リエ

 

ひとりぼっちじゃない (小説) - Wikipedia

 

 

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