★★☆☆☆
あらすじ
意思を持って自由に動き回れる木彫りの人形ピノッキオは、作り主で父親代わりのジェッペットのいうことを聞かずに人形劇を見に行き、連れ去られてしまう。
児童文学「ピノッキオの冒険」が原作で、ロベルト・ベニーニらが出演。イタリア映画。124分。
感想
児童文学で有名なピノキオの実写映画化作品だ。主人公ピノッキオの木彫り人形具合や、クジラやキツネのキャラの造形は見事で、ヴィジュアル的に楽しめる。ピノッキオが歩く姿も絵になり、時おりチャップリンぽくもあった。
序盤のロベルト・ベニーニ演じるジェッペットじいさんのユーモラスな言動やピノッキオとのコミカルなやり取りは、その後の展開に期待を抱かせたが、すぐにピノッキオだけの単独行動となる。ジェッペットじいさんの言いつけを守らず、村の外に連れ去られてしまう。
そしてピノッキオは各地で様々な出来事に遭遇するのだが、そのどれもが取りとめのないエピソードばかりだ。話が地味で、どうにも盛り上がりに欠ける。もっと思い切りファンタジックにやればいいのに、こじんまりとしてしまっている。
また話の推進力も弱い。家から遠く離れてしまったピノッキオが故郷に戻る話かと思ったがそうでもなく、途中の地でのんびりと暮らしたりして切実さはない。いなくなったジェッペットじいさんを必死に探すでもない。また、人間になりたいと強く望んでいる様子もない。ピノッキオが何を望んでいるのかが伝わって来ない。
だからあまり少年の成長譚や冒険譚といった感じはなくて、ただ気の赴くままにフラフラするピノッキオのあてどのない様子をただ追うだけになってしまっている。それこそ熱しやすく冷めやすい、気まぐれな子供を見ているかのようだ。その間に勝手に学び、成長しているだけだ。
ピノッキオと聞くと思い浮かべる鼻が伸びる姿や、クジラに飲み込まれるシーンもさらっと短く描かれるだけだった。見栄えのいいキャラたちも、猿の裁判長が少し面白かったくらいで、他はほぼ印象に残らない。見どころがあまりなくて、飽き飽きしてくる。
原作がこんな感じなのかもしれないが、よく考えるとちゃんと読んだことがないことに気付いた。取りとめがなく、あてどなく、こんな話だったのかと意外だ。いかにもベッドで寝る前の子供にささやきかけるように読み聞かせる物語だ。子供や子供のような心を持っている大人なら楽しめそうだが、そうでない大人にはきついかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 マッテオ・ガローネ
脚本 マッシモ・チェッケリーニ
出演 フェデリコ・エラピ/ロベルト・ベニーニ/ジジ・プロイエッティ/ロッコ・パパレオ/マッシモ・チェッケリーニ/マリーヌ・ヴァクト/(声)ドミティッラ・ダミーコ