★★★☆☆
あらすじ
ファッション・ブランド「グッチ」の株式を半分保有する創業家一族の長男と結婚した女は、やがて会社を独占する野望を見せるようになる。
ファッション・ブランド「グッチ」の創業一家で起きたお家騒動を題材とした作品。レディー・ガガ、アダム・ドライバー、アル・パチーノら出演、リドリー・スコット監督。157分。
感想
富豪のグッチ一族の男と結婚した女が主人公だ。彼女の野望が創業一族の平穏をかき回していく。
主人公は、一族の男とパーティーで出会う。男がさして魅力的でもなかったのに、名前を聞いて態度が変わったところからも、彼女が彼ではなく一族の栄光に惹かれたのは確かだろう。だから、男が反対する家族との縁を切って結婚しようと言い出した時に、素直に喜んでいたのは意外だった。それでは一族の栄光に預かれない。その後、二人は慎ましく暮らし始めたので、純粋に愛情があったということだろうか。
だが、ファミリービジネスを重視する夫の叔父から声を掛けられると、嫌がる夫の尻を叩き、即座に飛びつく。結局はこうなると読んでいたのなら、徳川家康ばりに忍耐強くて、したたかだ。そして、一族のメンバーに次々と取り入り、確固たる地位を築いていく。さらにはそれだけでは飽き足らず、やがてはすべてを独占しようと欲望を強めていく。
ただ、その過程がギラギラ、ドロドロと描かれていくわけではなく、妙に淡々としているのが物足りない。従兄弟を陥れて締め出した時も、怒る彼をあざ笑うでも、冷たい言葉を浴びせるでもなく、キョトンとした顔で不思議そうに眺めるだけだった。他の手口も大体そんな調子でふんわりしており、もっと悪い顔をしながら権謀術数を張り巡らせ、バチバチにやり合ってくれよと思ってしまった。
しかし、冷静に見てみれば、会社は脱税まみれの杜撰な経営状態だし、後継候補は無能なうえに虚栄心が強いというロクでもない人物で、そもそもがグダグダだった。一方の主人公側にしても、夫は権力を握ってからは経営そっちのけで豪邸や高級車を買い漁って散財し、豪遊している。頑張って経営を立て直そうとしたけどダメだった、と言うならまだ同情の余地があるが、それではただのダメ人間だ。一族と距離を置いて弁護士になろうとしていたというからまともな人間かと思ったが、所詮は単なるお金持ちのお坊ちゃんに過ぎなかった。
主人公の夫に、「ゴッドファーザー」のアル・パチーノ的な活躍を期待したのが間違いだったが、世の中の二代目、三代目なんてこんなものなのだろう。まるで自分が有能かのように振る舞っているが、そのほとんどは創業者の遺産をただ食いつぶしているだけの凡人だ。自分を特別な存在だと思っている分だけ、たちが悪いのかもしれない。そんな名家の張りぼてぶりを炙り出す映画なのだろう。
そう考えると、世襲議員とそれに媚びる議員ばかりの国がグダグダになるのもよく理解できる。グッチ家のように乗っ取られないことを祈るばかりだ。
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主人公はやがて夫に捨てられる。必死によりを戻そうとするのだが、彼女自身が愛のためなのか、既得権益のためなのか、よく分かっていない感じなのが印象的だ。彼女自身も有能とは言い難い。現実のお家騒動は、「ゴッドファーザー」みたいに劇的ではなく、単なるポンコツたちによる締まりのない争いに終始するだけであることを教えてくれる。
スタッフ/キャスト
監督/製作
脚本 ベッキー・ジョンストン/ロベルト・ベンティヴェーニャ
原作 ザ・ハウス・オブ・グッチ
出演 レディー・ガガ/アダム・ドライバー/ジャレッド・レト/ジェレミー・アイアンズ/サルマ・ハエック/ジャック・ヒューストン/カミーユ・コッタン
音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

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