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「インドへの道」 1984

インドへの道【字幕版】 [レンタル落ち]

★★★☆☆

 

あらすじ

 イギリスから婚約者のいるインドを訪れた若い女性は、現地の人々と交流を図っていたが、ある時事件に巻き込まれてしまう。

 

感想

 前半はイギリスからやって来た主人公らと共に異国情緒あふれるインドの景色や文化を楽しむような内容となっている。また現地の人たちとの交流も描かれてほっこりする物語なのかと思っていたら、中盤に一気に様相が急変してしまって驚いた。

 

 そのきっかけとなったのが、主人公が知人のインド人医師らと訪れたマラバー洞窟での出来事だ。話は逸れるが、最初は洞窟を見て何が面白いのだ?と思ってしまっていたのだが、実際に洞窟の映像を見ると、大きな岩肌に不自然な真四角な穴がいくつか空いており、モノリス的な違和感のあるとても不思議な場所だった。行ってみたくなるのも分かるような気がした。

 

 

 どんな由来や歴史があるのか気になって調べてみると、これは撮影のために作られた穴だと分かってがっかりしてしまった。実際は「バラバー洞窟」というところがモデルらしいのだが、撮影隊が気に入らず自作したようだ。

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 この洞窟で起きた事件がきっかけとなり、終盤は主人公とインド人医師の裁判に突入していく。この裁判の過程において、それまでイギリス人とインド人、両者の間にあったわだかまりが表出し、可視化されたような形になる。ただイギリス人の横暴さもインド人の稚拙さも、どちらも公平に描いている点には好感が持てる。その他の場面でも基本的にはどちらの文化や考え方も批判的にではなく、フラットな視点でとらえようとしているように見える。もちろん、そもそもイギリスがインドを植民地としているという前提はあるのだが。

 

 しかしこの裁判は中途半端な形で終わりを迎える。結局は、結婚を間近に控え異国の地で情緒不安定になってしまった主人公が取り乱して、現地の人たちを振り回してしまっただけの話のような気もする。事件直後の血まみれの彼女を見て勘違いし、イギリス人たちが怒ってしまったのも仕方がないように思えるし、イギリス主導の出来レースの裁判にインド人たちが反発を感じるの理解できる。

 

 この裁判が終わった後に被告だったインド人医師が、彼を信じて助けようとしてくれたイギリス人教授にまで急に冷たい態度を取るようになったのは印象的だった。イギリス人に偏見の目で見られている彼らだが、彼らもまたイギリス人を偏見の目で見てしまっている。ただ直前まで冤罪で人生を狂わされそうになっていたわけだから、頑なになってしまっていたとしても仕方がない部分はあるが。

 

 異文化との衝突で平常心を失ってしまいがちな異国の地ならではの物語だったが、映画の視点が主人公からイギリス人教授、そしてインド人医師へと次々と変わっていってしまうので、結局はいちばん何を描きたかったのかが曖昧になってしまっている印象を受ける映画だ。最後はインド人医師の改心で終わるが、その前にも色々と描かなければいけないことはたくさんあるだろうという気がした。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/編集 デヴィッド・リーン

 

原作 インドへの道 (ちくま文庫)

 

出演 ジュディ・デイヴィス/ヴィクター・バナルジー/ペギー・アシュクロフト/ジェームズ・フォックス/ナイジェル・ヘイヴァース/アダム・ブラックウッド/リチャード・ウィルソン/アート・マリック/ロシャン・セス

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インドへの道 - Wikipedia

 

 

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