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「いつか誰かが殺される」 1984

いつか誰かが殺される

★★☆☆☆

 

あらすじ

 ひとり親の父親が失踪し、自身も身の危険を感じた女子高生は、たまたま知り合った多国籍の集団と共に暮らし始める。

 

感想

 古びた洋館の豪邸にいわくありげな一族が集うシーンから映画は始まる。そこに都合よく探偵もいたので、タイトル的にもここでベタな殺人事件が起こり、犯人探しが繰り広げられるのだろうと思ったのだが、そうとはならなかった。

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 その後は舞台が変わり、父親が行方不明となってしまった主人公である女子高生の物語が描かれていく。この2つの舞台は最後につながるのだが、あまり必然性は感じなかったので、これは思わせぶりなスカしの演出だったのだろうか。

 

 物語の中心となるのは、失踪した父親の行方を探す主人公と仲間の姿だが、描写が色々とおかしかった。一緒に出掛けた父親が途中でいなくなっても主人公がたいして気にも留めなかったのは不自然だし、何者かに家を荒らされ自身も襲われたのに結局警察に通報もしなかったのも変だった。主人公が父親のことを心配している様子をほぼ見せず、あまり積極的に父親を探そうとしないのも不思議だった。

 

 

 そんな中で、主人公の友人であるコンピューターオタクの男の描き方が面白かった。尾美としのり演じる男の部屋にはいくつもパソコンとモニターが並んでいて、何やらプログラムを走らせている。さらには密かに思いを寄せる主人公をCGで再現し、色々と動かしたり喋らせたりもしている。

 

 今ならPC1台で済みそうではあるが、80年代でこれはすごい。見事に未来を予想しているのか、いつの時代も男が考えることは変わらないだけなのか、どう評価していいのかはよく分からないが。もしこの男がこの生活をそのまま続けていたら、現代ではAIを活用し、もっととんでもないことをしているはずだ。

 

 主人公は特に何もしないまま、まわりが頑張ることでいつの間にか父親の身に起きたことは明らかになっていく。冒頭の一族との関係も最後に明かされるが、だから何なの?と思ってしまうような内容で、結局この映画は何がやりたかったのだろうと困惑してしまう。

  

 おそらくは、いわゆる少女の成長物語を描きたかったのだろうが、それなら余計な事件を付け加える必要はなかったような気がする。単純に多国籍で自由な集団と出会うことで世界を見る目が変わった、とするだけで良かった。余計なことが加わってしまったせいで、そんなことより肉親に危害を加えられた方が人生観が変わらないか?と問い詰めたくなる。あまり事件には興味を示さず、その代わりに皆の前で歌を歌ったり、恋バナに感じ入ったりする主人公の様子を見ていたら、この人はサイコパスなのかな?と思ってしまいそうになる。

 

 それから内容とは全く関係ないが、最近故人となった監督の名前と役者(松原千明)の姿を見て、昭和も遠くになりにけりだな、としみじみとしてしまった。もうそういう時代になりつつある。

 

スタッフ/キャスト

監督 崔洋一

 

脚本 高田純

 

原作 いつか誰かが殺される (角川文庫)

 

製作    角川春樹

 

出演 渡辺典子/古尾谷雅人/松原千明/白竜/石橋蓮司/尾美としのり/斎藤晴彦/河原崎長一郎/橋爪功/白川和子/加藤治子/山西道広/片桐竜次/岡本麗

 

音楽 梅林茂

 

いつか誰かが殺される - Wikipedia

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