★★★☆☆
あらすじ
女性ジャーナリストは、幼少期に人気俳優と文通していたことで話題となった若手俳優にインタビューをする。
ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、キャシー・ベイツら出演。123分。
感想
幼少期に人気俳優と文通し、今は若手俳優の男が主人公だ。彼の思い出と人気俳優の素顔が描かれていく
離婚した母親と共にイギリスで暮らし始めた主人公は、その家庭の事情や子役をやっていることもあって学校でいじめられている。ただ、一方的にやられて傷ついているというよりも、執拗な嫌がらせに迷惑しているといったほうが近い。いちいち邪魔してくるいじめっ子にちゃんとやり返してもいる。
そんな彼が夢中になったのがテレビドラマだった。興奮して絶叫しながらテレビを見る少年に、ちょっと度が過ぎているのではないかと心配してしまうほどだったが、そのドラマに出ていた俳優が好きになり、ファンレターを送ったところ返事が来て、こっそりと文通するようになった。
なぜ「こっそり」なのか、最初はよくわからなかったが、子供を手懐けようとするグルーミングと誤解されるかもと思ったからなのだろう。スターとの文通なんて夢のある話だと思っていたが、冷静に考えれば、自分の子どもがよく知らない大人とやり取りをしていたら不安になるのは当然だ。母親にバレた時にはやはりやり取りを止めるように命じられていたが、そうなることを予想していた主人公は賢かった。
一方の人気俳優は、世間の期待するイメージと本当の自分とのギャップに苦しんでいる。性的指向や親子関係、スターとしてのキャリアなど、苦悩する彼の素顔が描かれている。だがその内容は、典型的なスターの光と影といった感じで、それほど心に迫るものはない。
また、あちこちで登場人物たちに含蓄のありそうな言葉を語らせているが、そのほとんどはいまいちで、あまり頭に入ってこない。だがそんな中で、エージェントの女性が口にした「わたしの今は、自分で選んできた人生の結果だ。他にもいろんな選択肢があったが、こういう風にしか生きられなかった。」という言葉はグッと来た。
この言葉の前半部分はよく耳にすることだが、後半部分があることで他の可能性に対する後悔は薄れ、今の自分を肯定的にとらえることができる。それが自分の本当の気持ちよりも名声やキャリアを優先してきた人気俳優に投げかけられるから、より一層胸に響く。
親子関係など、時に人気俳優と主人公が重ねられて描かれる。ただ、文通していた二人の関係が物語に十分な効果を与えているようには感じられず、片方だけを描けば良かったような気もしてしまう。悪くはないがミーハーな感じもする使用楽曲も含めて、雰囲気はあるが深みに欠ける印象の映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案/製作 グザヴィエ・ドラン
脚本 ジェイコブ・ティアニー
出演 キット・ハリントン/ナタリー・ポートマン/ベン・シュネッツァー/ジェイコブ・トレンブレイ/スーザン・サランドン/キャシー・ベイツ/タンディ・ニュートン/クリス・ジルカ/マイケル・ガンボン/サラ・ガドン
音楽 ガブリエル・ヤレド

