BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ジョナサン ふたつの顔の男」 2018

ジョナサン ふたつの顔の男(日本語字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 もう一つの人格と一つの体を共有しながら問題なく過ごしていた男は、あることがきっかけとなり、歯車が狂い出す。

 

感想

 多重人格の男の話で、最初に設定をすべて説明してしまうのではなく、途中まではそれを曖昧にしたまま物語が進んでいく。なんとなく二つの人格があるようだという事は分かるのだが、具体的にはどうなっているのかはよく分からず、おかげで色々考えながら注意深く見ることになる。この観客の興味を惹きつけ続ける構成は見事だ。

 

 主人公はもう一つの人格であるジョンと一つの体を12時間ずつ交代で使っている。主人公は朝7時から夜7時まで、ジョンはその残りの時間という割り当てだ。映画の中でも触れられているが、なかなか太陽が見られない夜の部担当のジョンは辛いかもしれない。自分もどちらかを選べと言われれば迷うがそれでも日中の時間帯を選ぶような気がする。ジョンが途中で心を病んでしまうのはそのせいもあったのだろう。それぞれが4時間ほどのパートの仕事をしながら、それぞれの人生を生きているというのも面白い。終始徹底して主人公の視点だけで描かれ、ジョンはビデオレターで登場するのみなので、見ているこちらも多重人格者の気持ちを追体験できる。

 

 

 ただそんな一つの体を上手く使い分けていた生活も、二人で取り決めていたルールを破り、ジョンが恋人を作ったことが発覚してからおかしくなり始める。確かに12時間以上も一緒にいることがある恋人を作ってしまうと厄介なことになりそうだ。事情を話せば気味悪がられるだろうし。それを咎められたジョンは怒り、二人の仲は険悪なものとなってしまう。だがジョンが自棄になって喧嘩をしたりドラッグをやれば、同じ体を持つ主人公自身も被害を受ける。ましてや自殺などされてしまえば主人公も一緒に死んでしまうわけで、当たり前だがそれでも二人は共存していくしかない。

 

 だが実はもう一つ解決法がある。それはどちらか一つの人格を消し去ってしまう事だ。よくよく考えればこれが普通の解決策だろう。詳しくは知らないが実際の多重人格者の治療も、元の人格以外の人格を消し去ってしまうのが一般的なのではないだろうか。逆に彼らのように上手く共存しようとしていることの方が異常かもしれない。ただ彼らの場合は生まれた時から多重人格だったようなので、どちらが元の人格なのか判断が難しいのだろう。

 

 狂い出した共存生活は、やがて二つの人格のせめぎあいに発展していく。そして迎えたラスト。ドラマティックではあるが割と普通の展開だなと思ってしまった。でも自然とそうなってしまったわけではなく、博士によって人為的に一つの人格を消し去られてしまったという見方も出来るのか。主人公はジョンの恋人を取ってしまったりと、元々もう一つの人格を利用しているというか、乗っかっているような部分があったので、この結末は必然だったのかもしれない。

 

 それに完全に消え去ってしまったわけではなく、ジョンの一部となって今も残っているようにも感じられた。今までビデオレターの中でしか見られなかったジョンがラストで遂に観客の前に姿を現したことが、それを示しているようにも思える。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ビル・オリヴァー

 

出演 アンセル・エルゴート/パトリシア・クラークソン/スキ・ウォーターハウス/マット・ボマー

 

ジョナサン -ふたつの顔の男- - Wikipedia

ジョナサン 二つの顔を持つ男 【字幕版】 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com