★★★☆☆
あらすじ
チーマーの先輩に呼び出されて女を追う男、クスリが切れて探し求めるOL、大金を手に入れたパキスタン人など、世間をはみ出た者たちの一日。
古田新太、津田寛治ら出演。84分。
感想
横浜のはみ出し者たちの一日を追う群像劇だ。
盲目の老女の朝から物語はスタートする。コンビニで自分が欲しいものを大きな声でリクエストする彼女に、目が見えないと一人では買いたいものも買えないのだと気付かされる。よく考えれば当たり前だが、その場を見ないと理解できないことはたくさんある。他者を理解するのは難しい。
その他、友人の遺骨を引き取りに来た男やめんどくさい先輩に付き合わされるチーマーの男、ドラッグを求めて彷徨う中毒の女など、様々な人物のエピソードが順に展開されていく。
そんな中でチーマーたちの話は、日焼けした長髪黒髪の男たちが登場して、こんな人たちいたなと懐かしくなった。まだいるのだろうか。彼らのファッションアイコンだったであろうキムタクの話も出てきて、いかにも90年代の趣がある。
これらエピソードはそこそこだったが、彼らが出会って共に行動するようになる終盤は味わい深い。どこかにヤバさがある彼らだが、衝突することなく気さくに仲良くなったのは意外だった。交わりそうにない人たちも状況によっては交わることが出来る。
そして彼らが一緒にやるのが「死者を弔うこと」だったのは印象的だ。電車の座席で誰にも気づかれずに死んでいた男のエピソードは、映画「コラテラル(2004)」を思い出させたが、彼らの末路を暗示しているようでもある。
時にはこんな不思議なめぐりあわせの夜があったりしながら、やりたいことをやって生きられたのならそれはそれでいいような気がする。彼らのさっぱりとした別れ際も好感が持てた。
ドラッグ中毒の女の話だけが他と交錯しなかったのが気になったが、いい余韻に浸れる映画だ。そしてまた新しい一日が始まる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 山本政志
出演 飯島みゆき/古田新太/義幸/津田寛治/エステル・モレノ

