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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「女経」 1960

女経

★★★★☆

 

内容

 三人の監督がそれぞれ、金に執着する女を描くオムニバス映画。

 

感想

 タイトルの「女経」がどんな意味なのかよく分からなかったのだが、ただ女たちに関する話くらいの意味なのか、それとも女の経典のような仏教的な意味合いが込められているのだろうか。原作を読めば分かるのかもしれない。お金に執着する三人の女の物語だ。

 

 第一話はキャバレーで男を手玉に取って金を稼ぎまくる女の話だ。そういう仕事なんだから何が悪い、とでも言うような彼女の開き直り具合に庶民のたくましさを感じる。そして最後の最後で心優しさを見せてしまうところもまた庶民らしい。庶民とは善良なる部分と狡猾な部分を併せ持った人々だと言える。

 

 

 第二話はとぼけた味わいの物語だ。失踪中の作家が海辺の一軒家に住む謎の美女に出会う、というおとぎ話めいた話が、一転して現実味のある話へと切り替わる。女を演じる山本富士子が、自分のことをずば抜けた美人だと言い放つのが面白い。そして彼女の企みがバレた時、あっさりと認めてしおらしく謝ってしまうところも可愛らしかった。

 

 彼女が手玉に取ったつもりが一枚上手だった作家を演じる船越英二の飄々とした雰囲気も良かった。(公開の順番としてはこちらが先だが)「黒い十人の女」での彼が演じたキャラクターを思い出してしまった。

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 第三話は、旅館などいくつかの店を切り盛りする女が主人公だ。金を稼ぐことだけに一心不乱になっていた主人公が、大切なものに気付くというオーソドックスなストーリーだが、情感たっぷりに描かれて素直にしっとりとした気分にさせられてしまった。京マチ子のいかにも京都の女といった立ち居振る舞いや、彼女の義理の父親を演じる中村鴈治郎の執拗ないやらしさがなんとも言えず魅せられた。

 

 三者三様の女性が描かれて、バラエティに富んだオムニバス映画だ。一話より二話、二話より三話と尻上がりに面白さを増していく構成も良かった。

 

 どれも金にがめつい女の話だと思ってしまいがちだが、彼女たちからすれば、ただ男並みに自立した生活を送りたかっただけで、そうするにはこういうやり方しかなかっただけのことだろう。男並みに働いて男並みに稼げる環境があったなら、そこで働いていたはずだ。そんなことも考えてしまう映画だった。

 

 

スタッフ/キャスト

原作 女経 (中公文庫 A 61)

音楽 芥川也寸志

 

「耳を噛みたがる女」

監督 増村保造

出演 若尾文子/川口浩/左幸子/田宮二郎


「物を高く売りつける女」 

監督 市川崑

脚本 和田夏十 *ノンクレジット

出演 山本富士子/船越英二


「恋を忘れていた女」

監督 吉村公三郎

出演 京マチ子/二代目 中村鴈治郎/根上淳/浦辺粂子/市田ひろみ/

撮影 宮川一夫

 

女経

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女経 (1960年の映画) - Wikipedia

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