★★☆☆☆
あらすじ
深刻な病の母親と暮らす少年の前に、ある晩巨大な怪物が出現する。
シガニー・ウィーバー、リーアム・ニーソン(声)ら出演。小説原作。108分。
感想
重い病気の母親と暮らす少年と、イチイの木の怪物が織りなすファンタジーだ。怪物が3つの物語を語り、その後少年に真実の物語を語るよう要求する。
怪物が語る物語は、王道の展開を覆すようなひねりの利いたものだ。世の中は勧善懲悪の分かりやすい世界ではないことを教えてくれる。物語自体も興味深いが、アニメとなるこのパートの映像表現もクオリティーが高く、視覚的にも魅力的だ。もっと見たくなる。
音響も素晴らしく、冒頭のリーアム・ニーソンの語りなどは、まるで「ロード・オブ・ザ・リング」を彷彿とさせるようなゾクゾク感があった。怪物の造形も見事だ。
一方でそれ以外の部分、主人公の日常生活を描く部分は、陰鬱で淡々としている。あまり面白みがなくて退屈だ。学校でのいじめや、もう先が長くない母親のもとで暮らす主人公の今後を見据えた、大人たちの動きなどが描かれる。
だが主人公の心境が分からない。母親に対する思いが見えないのももどかしい。祖母と暮らすことを嫌がるのは、母親と離れたくないからかと思ったら、単純に祖母が嫌いだからだった。また、離婚してアメリカで暮らす父親の元に行きたがる様子も見せており、まるで母親の存在を無視しているかのような振る舞いをしている。ヤングケアラーみたいな二人暮らしが長く続いたことで、もはや自分の本当の気持ちが分からなくなっているのかもしれない。
主人公の母親に対する思いが伝わって来ないので、ついに彼女が臨終を迎える時もそんなに胸に迫るものはなかった。そして主人公が、怪物に求められた真実を語るクライマックスは、ずっと気になり、そうじゃないかと思っていたことをただ語るだけだった。まったく驚きがない。
祖母との関係や母親の闘病を暗示するような怪物の物語も、現実とのつながりが分からないわけではないが、分かりづらくピンと来ない。
どこかスッキリしない気持ちが残る映画だ。出来が良かった怪物の物語パートの映像が、3つ目の物語では端折られてしまったのも残念だ。現実部分はいらないので、怪物の物語パートをもっと膨らませ、それだけのアニメ映画にしてくれれば良かったのに、と思ってしまった。
スタッフ/キャスト
監督 フアン・アントニオ・バヨナ
出演 シガニー・ウィーバー/フェリシティ・ジョーンズ/トビー・ケベル/ルイス・マクドゥーガル/リーアム・ニーソン(声)/ジェラルディン・チャップリン
