★★★★☆
内容
旧タイトルは 「魂の文章術 書くことから始めよう」。
感想
タイトルに「魂の文章術」とあるだけに、正しい文法でテクニカルな文章を書ける技術を身につけるというよりも、書き手の魂が伝わるような、人の心を動かす血の通った文章を書く方法について書かれている。
魂のこもった文章というのは、オリジナリティのある文章、その人にしか書けない個性あふれる文章ということだから、まずはとにかく自分をさらけ出すことが必要だ。人によく見られたい、カッコつけたいなどという考えは捨てなければいけない。
そのためにはとにかく文章を書けというのが著者の主張だ。それも、推敲して何度も書いては消してを繰り返すようなものではなく、頭の中にあるものをただひたすら吐き出していけ、という主張。それを人に見せる必要はないが、そうやって吐き出した物は、その後の文章に滲み出てくる。
文章の構成や文法を考えながら書いたり消したりすることは、編集者の視点であって、まずはその視点を介在させないことが重要だ、というのは目からウロコだった。確かに文法や文章をチェックしながら書いていると、本来何を伝えたかったのか、分からなくなる時があった。書いているときは、内なる編集者の声に耳を貸さず、クリエイターに徹する事が大事だ。
自分の内面をさらけ出すという事で、なんとなくセラピー的なものを感じない事もない。心の中のモヤモヤとしたものを吐き出すという意味で、そういった効果もあるのかもしれない。著者は禅や仏教から大きな影響を受けているようだ。
文章もマニュアル本にありがちなシンプルで分かりやすいものではなく、著者の経験を交えた、まさにこの本の内容を実践したような魂のこもった文章だ。おかげで結局何が言いたかったのだ?と思ってしまう章もあるのだが、とりあえず熱意は伝わってきて、モチベーションが上がるのは確かだ。
たいせつなのは、自分自身で状況を探ってたしかめることだ。前もって自分勝手なきまりを作るのはよそう。
p194
ただひたすら文章を書く心構えを説く啓発本ぽい内容かのように見えて、ボキャブラリーや新たな表現の見つけ方、ディテールの重要性など、ちゃんとテクニック上達のコツも書かれている。理路整然と書かれた無味乾燥なハウツー本よりも、気持ちが前面に出た文章のこの本の方が、時おり読み返したくなるような気がする。パラパラとめくって、モチベーションを上げるのにも良さそうだ。
支離滅裂だろうが、文法が滅茶苦茶だろうが、気にしないでとにかく書きまくれというのは、シンプルで分かり易く、何ひとつ難しいことはない。あとはやるかやらないか、それだけだ。
著者
ナタリー・ゴールドバーグ
登場する作品
「Fruits And Vegetables(果実と野菜)」
「God's Grandeur: Shmoop Poetry Guide (English Edition)(神の威光)」
「赤い手押し車」 ウィリアム・カルロス・ウィリアムズ
「The Country Between Us (English Edition)(私たちのあいだの国)」
「Percy Bysshe Shelley - To a Skylark(雲雀の歌)」
「Younger Than Springtime (feat. Bill Lee)(春よりも若く)」
「Jewish-American stories(ユダヤ系アメリカ人作家集)」 序文 アーヴィング・ハウ
「Top of My Lungs(声の限りに)」
「叫べ、拍手せよ(Shout, Applaud: Poems from NorHaven)」 Marisha Chamberlain
「Green Hills of Africa (English Edition)(アフリカの緑の丘)」
「禅マインド ビギナーズ・マインド (サンガ新書)(Zen Mind, Beginner's Mind)」(「初心・禅心」)
Banana Rose: A Novel (English Edition)