★★★★☆
あらすじ
息子が死刑囚となって一家崩壊した男の前に、その息子と獄中結婚した女が現れる。
三浦友和主演、田中麗奈、南果歩ら出演。赤堀雅秋監督が手掛けた同名舞台を自ら映画化。120分。
感想
息子が死刑囚となった男が主人公だ。家族は死刑となった次男の他に長男と妻がいたが、今はもう誰もいない。そんな一家の過去が描かれていく。
主人公はいわゆる昭和の親父のような男で、家族を養い、マイホームを買って一国一城の主となったことに誇りを持っている。昔ながらの価値観で家族に権威を振りかざし、外でも威圧的に振る舞う。レストランでの会食時に店員に詰め寄りながらも、会食相手には穏やかに話しかける様子にはヤバさが滲み出ていた。
何かと価値観を押し付けてくるそんな父親に、子どもが影響を受けないわけがない。影響の受け方には2種類あり、長男のように父親に脅えて周囲を窺うようになるか、次男のように父親の真似をするようになるかのどちらかだ。
ほぼニートの次男の言い訳などはまるで父親の口ぶりとそっくりだったが、父親のように人並みにうまく生きられないのは時代も環境も違うからだろう。今は情報だけは溢れているが、簡単にまともな仕事は見つからない。自己評価は低くなり、不安や焦りから社会に対する不満を募らせる。そして「やれば出来るが、やらないだけだ」と自分に言い聞かせている。
主人公の妻も抑圧的された生活で心が不安定だ。誰もがどこかいびつな家族像が浮かび上がってくる。だが、この程度のおかしな家族はそれほど珍しくないだろう。どこにでもいそうだ。次男が凶悪事件を起こすに至ったターニングポイントが描かれるわけでもないので、家族にその原因を見出すことは出来ない。同じような状況にいる人間なんていくらでもいるのだから、やはり犯行に及んだ次男が悪い、というだけのことなのだろう。
ただ、どんな家庭にも起き得ることだとは言えるのかもしれない。運悪くそんな家庭になってしまった主人公には、自己憐憫や被害者意識、それに虚勢や開き直り、そして息子への思いや世間への罪悪感など、様々な感情が入り乱れていることが読み取れる。演じる三浦友和が見事で引きつけられるキャラクターになっている。
誇りだった我が家に家族は誰もいなくなり、気が付けば主人公しかいないのが悲しい。何か答えが見つかるわけではないが、そんな家族だったというのが分かるドキュメンタリーのような映画だ。何もかもが嫌になって庭に飛び出すも失敗し、食卓に戻って再びご飯を食べ始めるラストは良かった。人はそれでも生き続けるしかない。
それから次男と獄中結婚した田中麗奈演じる女のバックグラウンドには、事件の原因究明と同じくらい関心があったが、こちらは何も描かれなかった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案 赤堀雅秋
出演
南果歩/新井浩文/若葉竜也/田中麗奈
