★★★☆☆
あらすじ
海辺の工場で働き、長屋のようなアパートで暮らし始めた男は、次第に隣人たちと交流を図るようになる。
「ムコリッタ」(牟呼栗多)は、仏教における時間の単位のひとつで、1/30日=約48分。萩上直子監督、松山ケンイチ主演。ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆ら出演。120分。
感想
海辺の町で暮らし始めた影のある男が主人公だ。愛想もなく無口だが、強引な隣人らのペースに巻き込まれ、次第に周囲に溶け込んでいく様子がコミカルさを交えつつ、淡々と描かれていく。
ムロツヨシ演じる自称ミニマリストの隣人をはじめ、満島ひかり演じる未亡人の大家、墓石のセールをして回っているトボけた雰囲気の親子など、主人公のまわりにいるのはどこか浮世離れした人たちばかりだ。
そんな彼らが、社会の片隅で肩寄せ合って生きる様子は、心和むものがあった。どこか黒澤明の「どですかでん」ぽくもある。久々に墓石が売れたセールスマンが親子で祝いのすき焼きをやっていたら、匂いを嗅ぎつけて大家を含む近所の人たちが集まり出し、勝手に上がり込んで食事に加わってしまうシーンは可笑しかった。
実際にこんなことをされたらもちろん嫌だが、彼らは単にタカるのではなく、自分が差し出せるものは差し出していて、ちゃんとギブアンドテイクの関係になっているのが良い。「お互い様」で、助け合っていることがよく分かる。コミュニティが機能しているといえるだろう。
主人公の背景が明らかになるとともに、隣人たちの様々なエピソードも語られていく。それらは「死」にまつわるものが多い。主人公は、幼少期に離別して顔も知らないような、ほぼ他人の父親が死んだことを知り、その対処に悩んでいた。だが隣人たちのエピソードに触れることで、その答えが定まっていく。
どこか投げやりだった主人公は、父親の死にしっかりと向き合うことで、自分自身にも自信が持てるようになった。結局、死者を敬えるような人が自分も敬えて、自分を敬える人が死者も敬えるということなのだろう。自分に自信が持てないのなら、他者や死者を敬うことから始めてみるのも手かもしれない。
未亡人の大家に、妊婦に対するドキッとする発言をさせたり、亡き夫に対する思いを赤裸々に表現させたりと、ただほっこりする話で終わらせるのではなく、もっと踏み込んで描こうとする姿勢が見える映画だ。だがそれらが大きな流れとはならず、ただ散漫に流れていくだけになってしまっている。間延びして、冗長に感じてしまった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
出演
ムロツヨシ/満島ひかり/江口のりこ/黒田大輔/知久寿焼/柄本佑/田中美佐子/笹野高史/緒形直人
出演(声)
音楽 パスカルズ


