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「獣道」 2017

獣道

★★★★☆

 

あらすじ

 母親が新興宗教にのめり込み、教団に引き取られ育った少女は、10代半ばで社会に放り出され、居場所を見つけるために彷徨う。

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感想

 隔絶された社会からほっぽり出された少女が居場所を探す物語だ。不良の集まり、善良な家庭、風俗の世界と次々と居場所が変わっていく。案外居場所がなくなることはないので、捨てる神あれば拾う神ありだなと思わなくもないが、それがないと生きていけないから本人が必死でそれを見つけているということなのだろう。好む好まざるは関係なく、見つけた場所にしがみつく。いじめの被害者の立場に居場所を見つける人間だっているのだ。

 

 居場所が変わると、それに合わせて主人公の容姿やキャラクターが変わっていくのが興味深い。これもまた属する集団に馴染むための人間の本能なのだろう。主人公を演じる伊藤沙莉がそれをうまく演じ分けている。中でもヤンキー時代のガサツで無駄に声がデカい感じがいかにもで笑えた。この時代はあまり続かなかったので、もうちょっと長い時間、彼女のヤンキー姿を見たかった。

 

 

 彼女が属す集団は、ある人たちのお決まりコースといったところだが、これは舞台が地方の中小都市なのも大きい。選択肢がないから行くところも自然と決まってしまう小さな世界だ。通っている高校を教えると、「何年の誰誰知ってる?」とヤンキーたちが必ず口をそろえて聞いてくるのが象徴的で面白かった。彼らの世界はそれしかない。

 

 そんな閉塞感のある世界に嫌気がさして、もっと大きな世界へ出て行こうとする者が出てくるのは当然だ。その一方で、はなからあきらめてそこで生きていこうとする者もいる。田舎はそれだけで分断が生まれ、軋轢を抱えてしまう。これは日本に限らず、世界中のあらゆる田舎で見られる光景だろう。

 

 変わっていく主人公の居場所の中では、善良な家庭だけが特殊で毛並みが違っていた。だがもしかしたら一番ヤバイのはこの一家だったかもしれない。世の中は善意で出来ていると信じ、身元もよく分からない未成年の少女を家に住まわせ、家族同然に暮らしている。一見いい話のようでいて、無知で無防備な彼らの姿に空恐ろしさを感じる。

 

 きっと自分の見えている世界がすべてだと思い込んでいるタイプの人たちだろう。しかも自分たちは間違っていないと信じているからたちが悪い。案外こういう人たちは多くて、政治家にすらいるから困る。その無知な善良さが、気づかず社会の害悪となる場合もある。

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 この物語では、主人公がさまよう姿とともに、孤独を抱える同じような少年との関係も描かれていく。だがこちらの少年に関しては、なぜ孤独なのか、どんな人物なのかがあまり明確に描かれていない。だから二人の関係と言われてもあまりピンと来なかった。ありきたりなものでもいいので、納得できそうなものをとりあえず提示して欲しかった。

 

 最後はハッピーエンドなのか?と思ってしまうような結末が待っていた。彼女は手持ちのカードを駆使して、その中で最良の居場所を見つけたということなのだろう。だがそれは、もし別の環境で生まれ育ち、手持ちのカードが豊富だったらきっと選ぶことはなかっただろう場所だ。そう考えると切ない。

 

 それから、エンドロールで流れる主題歌、餓鬼連合(餓鬼レンジャー with 伊藤沙莉)の「Miss Pen Pen」は先に曲だけ知っていたが、映画を見た後に聴くと歌詞の意味がよく分かって面白かった。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本 内田英治

 

出演 伊藤沙莉/須賀健太/アントニー/吉村界人/でんでん/矢部太郎/韓英恵/広田レオナ/マシュー・チョジック/松本花奈/近藤芳正/毎熊克哉

 

獣道

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獣道 (映画) - Wikipedia

 

 

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