★★☆☆☆
あらすじ
神隠しについて調査している女子大生は、「きさらぎ駅」という異世界に迷い込んだ経験を持つ元教師の女の元を訪れる。
ネットで語られている都市伝説をモチーフにした作品。82分。
感想
前半は、主人公の女子大生が話を聞きに行った元教師の女の神隠し体験が再現される。電車に乗って気が付いたら見知らぬ光景が広がっており、慌てて降りた駅が無人の「きさらぎ駅」だった。
そこで女は恐怖体験をしていくわけだが、これが怖い。ただし、怖いのは異世界にたどり着いたことではなくて、一緒にやって来た乗客の中のある若者が、なのだが。
この男は、初対面の女に威圧的で無礼な態度を取り、気に入らない言動をした友人には速攻で殴り掛かかる。挙句の果てには責められて逆上し、刃物で切り付けてくるし、殺そうとしてくる。人としてのまともな感情があるとは思えず、傍若無人を通り越してもはやサイコパスだ。
おかげでこの男の異常性ばかりが気になってしまい、異世界にはまったく目がいかない。これでは映画の主旨がブレブレだ。
そしてこの世界で次々と起きる怖ろしい出来事も、いまいちパッとしない。どこかで見たことがあるような怖い描写が続くが、一貫性がないので何がやりたいのかがさっぱり分からなかった。ゾンビ的な恐さなのか、幽霊的な恐さなのか、八つ墓村的な恐さなのか。CGがショボいのは仕方がないにしても、どういう世界観でどう恐がればいいのか、方向性をはっきりとさせて欲しかった。得体のしれない怖さがあるのではなく、ただ得体が知れないだけなので戸惑うだけだ。
後半は、女の話を聞いた主人公が自らの意志で「きさらぎ駅」に訪れる。そこでは女教師の時とほぼ同じことが起こるので、ループもののような、「カメラを止めるな!」のような趣があった。次に何が起きるか分かっている主人公が予防措置を取るチートをしたり、それをネタに笑いにしたりと、あまり成功しているとは言えないが、試み自体は面白い。人間のイヤな部分が炙り出される後味の悪い結末も良かった。
プロット自体はなかなか良く出来ているのに、肝心の異世界の設定があやふやだったために残念なことになってしまっている映画だ。それに内容も物理的に襲われる怖さではなく、心理的に追い詰められるような怖さを目指した方が良かったような気がする。ネタ元となった都市伝説は名前くらいで中身はよく知らなかったが、なんとなく不条理で不気味なものをイメージしていた。この映画も不条理と言えば不条理だが、怖くはない。
スタッフ/キャスト
監督 永江二朗
出演 恒松祐里/本田望結/莉子/寺坂頼我/木原瑠生/瀧七海/堰沢結衣/芹澤興人/佐藤江梨子