★★☆☆☆
あらすじ
近所のリンゴ農家に婿入りした男は、散布する農薬に妻が苦しんでいることを知り、無農薬でのリンゴ栽培に挑む。
阿部サダヲ、菅野美穂、山崎努ら出演、中村義洋監督。無農薬リンゴの栽培に成功した木村秋則の足跡を記した本が原作で、事実を基にした作品。129分。
感想
無農薬リンゴの栽培に挑む男が主人公だ。序盤は、なんでも分解してしまうような、仕組みを調べるのが好きだった子ども時代のエピソードがコミカルに描かれる。しかし、そのコミカル具合は中途半端で、空回り気味だ。子役から主演の阿部サダヲに切り替わるまでは、若干しんどかった。
そして、実家近くのリンゴ農家に婿入りした主人公の、無農薬でのリンゴ栽培を目指す挑戦が始まる。最初は賛同した仲間と集まったり、義理の父親の頼もしいサポートがあったりと、心が奮い立つようなシーンが続くが、失敗を重ねるうちに段々と暗いムードが漂い始める。
中盤は、借金や嫌がらせ、子どもの病気など、深刻なシーンばかりになってしまい、見ているのが辛くなってくる。これはいったい何の修行なのだ?見るのを耐えたら人間のステージが上がるのか?と、文句を言いたくなるほどの苦行だった。
実話なので、きっと実際に苦しいことの連続だったのだろう。だが、せめて希望は見せて欲しかった。失敗は続いているが少しずつ原因は絞れてきたとか、ヒントになりそうなことがいくつか見つかったとか、なんとかなりそうだという兆しを示してくれないと、ただただ辛いだけだ。
続ける理由が「行くも地獄、戻るも地獄。それなら行くしかない。」では、救いがなさすぎる。映画になっているくらいだから、きっと最後には成功するのだろう、という妥当な予想はあり、それだけが唯一の心の支えだったが、映画の中でそれを提示して欲しかった。
長い月日が流れ、もう無理だと諦めようとした時、主人公はついに状況を打開するヒントを見つける。ただ、これも実話なのかもしれないが、それだったら確かにそれまでの試行錯誤は無意味だったかもしれないなと思ってしまうもので、スッと冷めるものがあった。これまでやってきたこととの何らかのつながりを持たせ、報われた感を出して欲しかった。
ここからエンディングまでは感動的なシーンの連続だ。散々辛い思いをさせた後に泣かせるのは定番の展開ではある。だが、これから感動の場面ですとばかりに、ついに咲いた花をなかなか見せず、リンゴを再びかじる前にはたっぷり間を取って、とやられては、あざとさが目について白けてしまう。
それから、近所の人たちの嫌がらせや悪口、村八分的な扱いなど、いかにも田舎の闇みたいなことを描いておきながら、最後にちょっと優しくされただけで「やっぱり人間は親切な生き物です」と言ってしまうのは、かなり違和感があった。
彼らは、馬鹿にしてイジメていた人間が成功しそうになったので、手の平を返しただけに過ぎない。むしろ人間の醜い一面を浮かび上がらせていると言った方がいいだろう。実話を基にしているので、実際の主人公が暮らす地域の印象はかなり悪くなったが、大丈夫なのか?と余計な心配をしてしまった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
脚本 吉田実似
原作 奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録
出演 阿部サダヲ/菅野美穂/池内博之/笹野高史/伊武雅刀/原田美枝子/山﨑努/ベンガル/本田博太郎/野間口徹/中村有志
音楽 久石譲

