★★★★☆
あらすじ
主人公が勤める湖畔のホテルで巻き起こる数々の騒動。
感想
巻末の解説で吉本新喜劇的と評されていたが、確かにあの舞台でやっていそうな物語である。同じ設定、同じキャラで繰り広げられる物語。抱腹絶倒というわけではないが、それなりに笑える。そして下らないことをやりつつも、時々、何か深遠な言葉も出てきて、その高低差、落差がすごい。
私は男性は嫌わないが、そうして安易かつ即座に、場の雰囲気、を創出して、本質的な問題を一時的になかったことにしてしまう年配の男の甘えた雰囲気が大嫌いだ。
文庫 p161
確かにこういう光景をよく見る。おじさん達が深刻そうに話を始めて、急に誰かの一言で皆がガッハッハと笑って終わる、みたいな光景。でもよくよく聞いてみると何も解決していなかったりする。ただオチがついて解決したような気になっているだけという。そして結局、問題は先送りされただけ。これが巷のおじさん達ならまだいいが、政治の世界でも割とよくある光景だったりするから困る。テレビの門外漢のコメンテーターも、こんな感じの人が多い。
少しつながりのありつつも一話完結ぽい三章仕立ての物語。各章で、あれはその後どうなったのだ?と思わせるような、やりっぱなしで終わるエピソードがあって気になった。でもきっとこれは敢えてそうしているはずで、それによりなんだか後を引くような後味があって悪くない。色々と考えてしまう。
ラストはどこか宗教色さえ感じさせる結末。人は馬鹿げた事やふざけた事をやりながらも生きている。誰だっていつか腹の底から笑える日があることを信じて。そしてかつてそんな日があったことを抱きしめながら。
著者
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