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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「恋する惑星」 1994 

恋する惑星 (字幕版)

★★★★★

 

あらすじ

 失恋を受け入れられない刑事と窮地に立たされた裏社会の女、恋人と別れたばかりの警官と飲食店の店員、二組の男女の物語。

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 原題は「重慶森林」。英題は「Chungking Express」。香港映画。100分。

 

感想

 前後半で二組の男女の物語が描かれる。前半は裏社会の女と若い刑事のエピソードが展開される。

 

 女が麻薬密輸の手配をするシーンは、怪しげで惹きつけられる。いかがわしい場所に様々な人種の人々が集い、いろんな国の言葉が飛び交っており、混沌としている。都会の猥雑さに満ちている。

 

その時、ふたりの距離は0.1ミリ。57時間後、僕は彼女に恋をした

 

 こんな洒落たモノローグも都会ならではだ。都会でないと見知らぬ者同士がこの距離になることはまずないだろう。しかも二人はそんな一瞬があったことすら覚えておらず、とあるバーで実は再会の出会いをする。

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 しくじった仕事の後始末でくたくたになった女に、「パイナップル好き?」と何か国語かで話しかける金城武演じる若い男が可笑しかった。面倒くさい奴だが、女がサングラスをする理由を考察する場面で、鋭い観察眼を持ちながらも最後の結論を間違えてしまう抜けたところのある彼の若さが、この時の彼女にはちょうど良く、心地よかったのだろう。

 

 後半は元恋人に未練を残す優柔不断な警官と、彼の通うスタンドの売店の店員とのエピソードとなる。この店員を演じるフェイ・ウォンが可愛らしい。店先で大音量で音楽を流し、踊りながら働く姿にはグッときた。

 

 

 警官に恋をした彼女が取る行動はストーカーそのものだ。だが恐怖を煽るものではなく、明るい音楽が背景に流れているせいで、非常にポップな雰囲気になっている。

 

 映画とは関係ないが、きっと世にいる本物のストーカーたちの脳内では、こんな風に自分が映っているのだろうなと想像してしまった。決してホラーな自分ではない。だから、あなたのやってることはストーカー行為ですよ、と言われても、彼らは認められないのだろう。

 

 彼女に勝手に部屋を模様替えされる警官も、失恋の痛手からなのか、部屋の変化に鈍感だ。取り換えられたぬいぐるみや石鹸などに話しかけるシーンには思わず笑ってしまった。怖い話ではなく、どうかしている者同士のファンタジーになっている。

 

 ファンタジーから覚めて一年後に再会した二人が、警官の元恋人とは違って、互いのいつもとは違う服装を褒め合うのもいい。わずか一年で互いの職業が全く違うものになっているのも、都会ならではのダイナミズムだろう。

 

 前半のエピソードは少し重かったが、それが後半ののん気な明るさにつながっている。いいバランスのストーリー構成だ。ユーモアもある。村上春樹を思わせるような詩的なモノローグがいちいち小粋で、前後半とも最後のキメ台詞が見事に決まっていることに鳥肌が立つ。

 

 都会の喧騒や彼らの心情を表現するような、ブレたり揺れたりする幻想的な映像や、印象的に何度も繰り返される音楽と時おり訪れる静寂が効果的で、何度も見たくなるような魅力ある映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ウォン・カーウァイ

 

製作 ジェフ・ラウ

 

出演

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フェイ・ウォン/ブリジット・リン/金城武

 

音楽 フランキー・チェン/ロエル・A・ガルシア/マイケル・ガラッソ

 

撮影 クリストファー・ドイル/アンドリュー・ラウ

 

編集    ウィリアム・チャン/カイ・キットウァイ/クォン・チリョン

 

恋する惑星 (字幕版)

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恋する惑星 - Wikipedia

 

 

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