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「黒牢城」 2021

黒牢城 (角川書店単行本)

★★★★☆

 

あらすじ

 1578年、織田信長に謀反を起こし伊丹有岡城に立てこもった荒木村重は、城内で起こった事件の謎を、地下牢に押し込めていた信長の使者で軍師である黒田官兵衛に解かせようとする。直木賞受賞作。

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感想

 戦国時代、織田信長に謀反を起こした荒木村重が、籠城中に起きた数々の事件を地下牢に閉じ込めていた黒田官兵衛が解決していくミステリーだ。まずその設定が面白い。ただ、二人で仲良く助け合って謎を解くのかと思っていたら、両者バチバチとやり合いながら解決していくスタイルだった。だが、官兵衛からしたら生かさず殺さず囚人にされているわけだから、それを命じた村重と仲良く出来ないのは当然だろう。

 

 そして事件が籠城中の暇つぶしではなく、ちゃんと信長との戦いに備えるために解決しなければならないミステリーとなっているのは説得力がある。城内で起きた不可解な事件を放っておくと流言飛語が飛び交って兵の士気が下がり、やがては城主への忠誠心が薄れて寝返りが起きる。戦う前に内部から崩壊してしまいかねない。ちゃんとこれも戦の一環として必然性のあるものとなっている。

 

 基本的には村重がだいたいの推理を行なっていく。だが捜査が行き詰まり、最後の手段として地下牢に赴いて官兵衛に助言を求めるスタイルだ。毎回、村重の話を聞いただけで一発で謎を解いてしまう官兵衛が凄すぎやしないかと思わないでもないが、それでも純粋に謎解きを楽しめた。官兵衛からヒントをもらって地上に戻った村重が行う事件の裁きも面白い。

 

 一向宗や南蛮宗など宗教的な話題が多く、全体を貫いていたミステリーの種明かしにはいまいちピンと来ないところがあった。だが毎回の村重と官兵衛の緊張感あふれやり取りは読みごたえがあり、官兵衛が単なる好奇心や親切心で謎解きをしていたわけではないことが分かるクライマックスは心躍るものがあった。

 

 

 この荒木村重の謀反は、一族郎党は皆殺しにされたのに本人だけはなぜか生き残る不思議な結末を迎えるわけだが、それに官兵衛がこの物語のように関与していたなら、なんだか分かるような気がするなと納得してしまいそうになる。いろんな夢想をしてしまう物語だった。

有岡城の戦い - Wikipedia

 

 

著者

bookcites.hatenadiary.com

 

 

 

登場する作品

黒田官兵衛/荒木村重

 

 

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