★★★☆☆
あらすじ
新潟の大地主で、酒蔵の蔵元でもある一族の物語。
感想
大正期に一族に娘が生まれたところから物語は始まる。しかしそれまで8回妊娠したのにすべて死なせてしまっているというのは色々とすごい。裕福な家庭なので健康状態自体は悪くないと思うのだが、もともとの母親の体の弱さに加えて、医療レベルや厳しい気候なども影響していたということなのだろうか。そしてそれでも何とか子供を産もうとトライするのもすごい。それだけ後継ぎを産むことを強く望まれていたという事だろう。本人も産まなきゃいけないと思っていたようで、プレッシャーがすごそうだ。
そしてついに生まれ育った娘も、いつかは失明するという病気にかかってしまう。恵まれた境遇なのに気苦労の多い一族だ。そんな次々と襲い来る困難を大きな心で受け止める、松方弘樹演じる当主の人間の大きさが印象的だが、でも彼のそんな性格が様々な困難を呼び込んでいるような気がしないでもない。目の不自由な娘が学校へ行くのを嫌がったら、気の毒がってすぐにそれを取りやめさせていたが、それは無理にでも通学させるべきだった。なんだかんだで彼は娘に甘く、そのせいで娘は我がままで気の強い女に育ってしまった。終盤はそんな娘に皆が振り回されただけと言えなくもない。
映画は、そんな娘をはじめとした一族に関わる女たちの生き様を描く群像劇となっている。だが、どの女性に関しても中途半端にしか描けていない消化不良感がある。あまり踏み込んで描いていないために、そんな女の人たちがいたのだなというような薄い印象しかなく、彼女たちの情念のようなものまでは浮かび上がってこなかった。浅野ゆう子演じる当主の妻の妹がメインで描かれているが、彼女ですら当主に対する淡い思いは曖昧にしか伝わってこない。見せ場は、肩透かしを食らった気合の入った入浴シーンぐらいか。
ラストも、一色紗英が演じる娘の強引な行動は、もっとやりようがあったように思うし、彼女の気持ちを相手が当然受け入れる前提なのもよく分からなかった。彼は幼馴染なのでそれなりの気持ちはあったのかもしれないが、結婚まで考えていたかどうか。でも世話になっている当主に頭を下げられては断れなかったのかもしれない。もしそうだったとしたら傲慢な金持ちの横暴でしかないと思ってしまって、気持ちも盛り上がらなかった。全体的にいまひとつ何を描きたかったのかがよく分からない映画になってしまっている。
スタッフ/キャスト
監督
原作 藏 (上) (角川文庫)
製作総指揮/出演 松方弘樹
出演 浅野ゆう子/一色紗英/夏川結衣/西島秀俊/江藤潤/川島なお美/石立鉄男/神山繁/船越栄一郎/長谷川初範/蟹江敬三/朝丘雪路/加藤治子
音楽 さだまさし/服部隆之