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「ラストエンペラー」 1987

ラストエンペラー ディレクターズ・カット [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の数奇な人生。アカデミー賞作品賞。

愛新覚羅溥儀 - Wikipedia

 

感想

 前半は紫禁城内での若き日の皇帝の日々が描かれる。豪華な衣装やセット、大勢を動員したシーンなど、見ごたえのある映像が続く。特に即位式や寝室のシーンの美しさは印象に残った。そしてそんな優雅な生活を映し出しながらも、映画は同時に主人公は世間知らずの箱入り息子でしかない事も暗示している。彼は城の外で起きていることを知ることは出来ない。

 

 考えてみれば皇帝は雲の上の人として庶民の目に触れる事はまずないわけだが、皇帝の側から見れば、彼もまた世間に触れることは出来ない事になる。即位式で幼い主人公が、大きな幕の向こうに大勢の臣下が列席している事を知って呆気にとられていたシーンが象徴的だったが、彼は外の世界からは隔離されており、見えないものがたくさんある。それらを何重にも覆い隠しているのは、自由に振る舞う主人公に従順な態度を見せながらも決してある一線は越えさせない周囲の人間たちだ。その仕組みが浮き彫りになってくると、彼は一番自由なように見えて実は一番不自由なのかもしれないと思えてくる。まさに周りの思惑に操られ、管理されているだけの裸の王様だ。

 

 

 やがて主人公は歴史の大きなうねりの中で、城の外に放り出されてしまう。そして時代の波に翻弄されていくわけだが、何も知らない幼い頃に皇帝となり、皇帝として育ってしまった男に、他にどうしようがあったのだと気の毒になってしまう。最善は地位を捨てて一般市民として生きていくことだったのかもしれないが、市民の暮らしを知らない男にそれが出来たとは思えないし、周囲もそれを許さなかっただろう。どんな生き方をしたところで彼を利用したい誰かが必ず現れて、今回とは違うまた別の悲劇に見舞われていたはずだ。

 

 数奇な人生を送った主人公の生涯は興味深かったが、ターニングポイントとなる出来事を点と点でつないだだけという印象で、人間関係も希薄にしか描かれておらず、もうちょっと主人公の内面や人間味のある姿を見たかったというのはある。ただ人間関係については、立場のせいで主人公は誰とも深い人間関係を結べなかったという事なのかもしれないが。最後は他の大勢の人間と同じように庶民として人生を終えたが、他の庶民とはスタート地点が大きく違っただけに、彼の波乱万丈の人生に万感胸に迫る思いになった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ベルナルド・ベルトルッチ

 

原作 わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈上〉 (ちくま文庫)


出演 ジョン・ローン/ジョアン・チェン/ピーター・オトゥール/英若誠/ヴィクター・ウォン/ヴィヴィアン・ウー/ケイリー=ヒロユキ・タガワ/高松英郎/立花ハジメ/リー・ユー/チェン・カイコー

 

出演/音楽 坂本龍一


音楽 デイヴィッド・バーン/蘇聡

 

ラストエンペラー - Wikipedia

 

 

登場する作品

完訳紫禁城の黄昏 上

 

 

登場する人物

愛新覚羅溥儀/レジナルド・ジョンストン/甘粕正彦/川島芳子/西太后/袁世凱 

 

 

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