★★★★☆
あらすじ
火星から回収した土の中にいた微生物がやがて成長し、宇宙ステーションのクルーを襲い始める。
感想
地球外生命体の発見に沸くも、やがては襲撃されて恐怖に陥れられる物語。「エイリアン」のようなよくあるパターンのSF映画だが、もはやこれはサメ映画と同じで一つのジャンルと考えた方がいいのだろう。
火星の土の中にいた未知の微生物を監視、観察する宇宙ステーションの乗組員たち。地球外生命の発見という世紀の出来事に興奮するのは分かるのだが、いささかその対応が軽率過ぎるような気がしないでもなかった。一応は隔離したゴム手袋越しではあるが、いきなり得体のしれない生き物を触るのはいくらなんでも楽観的過ぎるだろう。そこはまず棒のようなものでつついたりして反応を確認するべきだった。設備も何があるか分からないからと、万全の上にも万全の体制を取っているわけではなく、普通の一般的な設備でしかない。おかげで案の定、あっさりと隔離の外に逃げられてしまった。小さな生命体を勝手に擬人化して、赤ちゃんのようなものと思い込み、油断してしまったということなのだろう。こういう特殊な状況では一番やってはいけない事だ。
やがて生命体は急速に成長し、遂にはクルーを襲い始める。襲われた隊員の血が無重力の中でゆらゆらと広がっていく描写は不気味で良かった。映画は全体を通して静かなテイストで、登場人物が過剰に振る舞ったり、大げさな音楽が流れたりするような派手な演出はない。だがその地味さのせいで眠くなったりするようなことはなく、むしろ静かに怖い。乗組員たちが生命体と激しくぶつかり合うような勇猛な対決を考えず、なるべく接触しないように距離を取ろうと努めているのもリアルだ。それでも一人また一人と襲われて、じわじわと恐怖が広がっていく。
ちなみに乗組員のひとりとして真田広之も出演しているが、どうせ序盤であっさりといなくなっちゃうんだろうなと思っていたら、意外にもそこそこ粘っていたのは嬉しい誤算だった。なかなか悪くない役だった。
最後は、ありえない急成長を続ける生命体に対して、もはや太刀打ちできないと悟った生き残りの乗組員らが、せめて地球を侵略しないようにと自己犠牲の精神を発揮しようとする。この手の映画にありがちなベタで感動的な結末かと思っていたら、予想を裏切って後味の悪いエンディングが待ち受けていた。でもこの感じは嫌いじゃない。笑いがこみ上げてくるブラックジョークのような感触もあってなかなか良かった。
スタッフ/キャスト
監督 ダニエル・エスピノーサ
脚本 レット・リース/ポール・ワーニック
出演 ジェイク・ジレンホール/レベッカ・ファーガソン/ライアン・レイノルズ/真田広之/アリヨン・バカレ/オルガ・ディホヴィチナヤ
音楽 ヨン・エクストランド
編集 フランシス・パーカー/メアリー・ジョー・マーキー