★★★★☆
あらすじ
精神に変調をきたし、医師の管理下で生活するビーチボーイズのブライアン・ウィルソンは、 カーディーラーで一人の女性と出会う。
感想
こういうスターの実話物は、頑張った末にスターダムにのし上がるも、最終的には仲間割れで空中分解して消えてしまったり、金やドラッグで没落したりと寂しい終わり方をしがち。しかし、この映画はすでに主人公の人気が翳って精神的にも病んでしまっている状態から始まり、全盛期を振り返りながら再生していく姿を描いていく、という構成で、そういうワンパターンの展開から脱することに成功している。
そして、ビーチボーイズの成功物語というよりも、主要メンバーであるブライアン・ウィルソンの創作活動がメインで、ビーチボーイズの人気絶頂ぶりすらほとんど描かれない。説明する必要のないほどの超有名バンドだから、というのもあるだろうが。
しかし、創作活動に専念したいからという理由で、ブライアンがツアーには参加しないというのはすごい。日本公演に参加しなかったようだが、コンサートを見た人たちは不満じゃなかったのだろうか。一応、代役が立てられていたようだが。
一人アメリカに残り、名盤となった「ペット・サウンズ」のレコーディングを開始するブライアン。スタジオミュージシャンらが戸惑いをみせる中で、独特の感性で様々な音を組み合わせていく様子はまさに天才。観ているだけでワクワクする。その後に帰国したメンバーらのボーカル入れもするのだが、もうほぼ一人で作っているアルバムといっていいだろう。
ただ制作中は他のメンバーとの対立や、父親との確執、ドラッグの乱用の問題があり、さらには今では傑作とされるアルバムも発売直後はセールスが伸び悩み、評判もいまいちで、次第にブライアンを精神的に追い込んでいく。このあたりは創造性に溢れた純粋無垢な天才青年が周りに潰されていく、みたいな描き方だが、ちょっときれいに描き過ぎなような気もする。
そしてその約20年後のブライアンは、精神を病んでるのをいいことに、担当医師にいいように操られている。しかし、担当医師は資産を奪うだけでも酷いのに、どやしつけて無理やり楽曲製作までさせたりしてえげつない。ブライアンレベルだととんでもない大金が動くので、そこまでできてしまうのかもしれないが、そんな悪人をくせ者役者のポール・ジアマッティが嫌な感じでうまく演じている。
そんな操られ人形のような生活をしているブライアンが一人の女性と出会うことで、窮地から脱するという物語。現在と過去が交互に描かれつつ展開する。本人が撮影に協力しているせいか、都合よく要所要所がぼやかされてしまっているような気もするが、それでも時代の雰囲気がよく表れていて、悪くない映画に仕上がっている。
取り敢えず、ここから復活してくるブライアン・ウィルソンが凄い。改めてビーチボーイズの曲を聴きたくなった。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ビル・ポーラッド
脚本/製作総指揮 オーレン・ムーヴァーマン
製作 クレア・ラドニック・ポルスタイン/ジョン・ウェルズ
出演 ジョン・キューザック/ポール・ダノ/エリザベス・バンクス/ポール・ジアマッティ
音楽 アッティカス・ロス
撮影 ロバート・イェーマン
ラブ&マーシー 終わらないメロディー - Wikipedia
登場する作品
登場する人物
ブライアン・ウィルソン