★★★★☆
あらすじ
スティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイら多くのアーティストを輩出した音楽レーベル「モータウン」の歴史に迫るドキュメンタリー。
創設者であるベリー・ゴーディ、所属アーティストのスモーキー・ロビンソン、スティーヴィー・ワンダーらが出演。112分。
感想
モータウンの内実に迫るドキュメンタリーだ。数々のヒット曲を生んだ会社の制作の秘密が明らかにされる。
会社の創設者であるベリー・ゴーディのインタビューがメインになっており、当事者による証言は非常に興味深い。また、アーティストで副社長も務めたスモーキー・ロビンソンと一緒にインタビューを受けるシーンが多く、歳を重ねた大物二人の仲の良い姿にほっこりもする。
大物同士は、最初は仲が良くてもやがて衝突し、疎遠になるイメージがあるので、この年齢になっても親しくしているのは意外な感じがしてしまう。途中で二人の記憶が食い違い、少し揉める場面があってドキドキしたが、慣れているのか、穏やかに事態を収拾したのは安心した。きっとこんな風に何度も意見をぶつけ合いながらやってきたのだろうと推し量れる場面だった。
レーベル内でも、アーティストたちは互いに競い合いながらも、決して足を引っ張り合うことはなかったというエピソードは印象に残った。負けたくないが、ライバルが売れれば自分たちのチャンスも増えると、互いに協力的だったようだ。やるべきことは、限られたパイの奪い合いではなく、パイ自体を大きくすることだと理解している。これはどんな組織にも当てはまることなので、肝に銘じておきたいところだ。
レーベルのメインが黒人アーティストということで、差別に関するエピソードもある。彼らが、差別が色濃く残る米国南部をツアーした時の話はインパクトがあった。アーティストたちもショックを受けていたということなので、米国内部でも地域差は大きかったのだろう。
ただ、モータウンは黒人だけの会社ではなかった、というのも面白い。いろんな人種の人たちが働いていた。当時としては珍しく女性の役員も多かったようだ。これは儲けることが第一で、金が稼げるなら人種も性別も気にしないという社長の方針があったからだ。資本主義を徹底するとダイバーシティになる。彼からすると特定の属性で固まっている会社なんて、甘っちょろい仲良しグループか、視野の狭い無能集団にしか見えないのかもしれない。これは会社だけでなく、国としてもそうだろう。
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この映画の製作総指揮としてベリー・ゴーディもかかわっているので、ブライトサイドばかりが強調されている可能性があることを留意する必要はあるが、一時代を築いたレーベルの内実を知ることのできる貴重な映画だ。小粋な演出とテンポの良い展開で、ダレることなく見ることができる。
スタッフ/キャスト
監督 ベンジャミン・ターナー/ゲイブ・ターナー
製作総指揮/出演 ベリー・ゴーディ
出演 スモーキー・ロビンソン/マーサ・リーブス/ザ・ジャクソンズ/ホーランド=ドジャー=ホーランド/バレリー・シンプソン/マリー・ウィルソン/スティービー・ワンダー/ニール・ヤング
音楽 イアン・アーバー
編集 ポール・モナハン



