★★★★☆
あらすじ
炭鉱が閉山して失業した男は、父親から貰った車に乗り込み、南へ向かう。
「労働者三部作」の第2作目。原題は「Ariel」。フィンランド映画。73分。
感想
失業した男がたどり着いた町で起こす騒動を描く物語だ。予期せぬ出来事に遭遇したりトラブルに巻き込まれても、主人公が表情を変えずに淡々としているのが面白い。オープンカーの屋根が閉まらず、雪景色の中をオープントップで車を走らせるシーンは可笑しみがあった。
とぼけた雰囲気のコメディーみたいな体裁になっているが、よく考えると主人公はあまり笑えない状況にいる。失業して年老いた父親は自殺するし、新天地に向かった主人公は道中で襲われ、全財産を失って宿なしになってしまった。しかもその後ふとした誤解から犯罪者にされ、刑務所に入ることになる。
主人公は炭鉱の閉山をきっかけに転落していったわけで、時代や社会に翻弄された弱者を描く松本清張ものみたいに、どんよりとした暗い話になってもおかしくない生活を強いられている。だが主人公はそれについて世の中に怒るでも泣き言を言うでもなく、飄々と生きている。
案外、社会的弱者は自身が社会的弱者であることに気付いていないものなのかもしれない。SNSで弱者を必死に叩いていた人の身元を確認したら、その人自身も社会的弱者だったというのはよくある話だ。ただこれは薄っすらと自覚はあり、そうじゃないんだと思い込むためにやっているような気もするが。どんなに辛くてもこれが普通だ、仕方がないんだと言い聞かせ、弱さに気付かない振りをしながら日々を過ごしている。
そんな人々が劇中にはたくさん登場する。社会の暗部をいくつも浮かび上がらせながら、あくまでもコミカルに描いている。最後はちょっとしたクライムサスペンスのようにもなって盛り上がった。その中で刑務所への差し入れと称し、恋人がしれっと主人公の手助けをするのも良かった。
厳しい状況にあっても人々はたくましく生きており、希望を持って行動することで道が開くこともある。原題の「Ariel」の意味が分かるラストは、明るい気持ちになれるものだった。味わい深い映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 アキ・カウリスマキ
出演 トゥロ・パヤラ/スサンナ・ハーヴィスト/マッティ・ペロンパー
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