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「メタモルフォーゼの縁側」 2022

メタモルフォーゼの縁側

★★★★☆

 

あらすじ

 書店でバイトする女子高生は、自分と同じようにBL漫画にハマった老婦人と仲良くなり、頻繁に会うようになる。

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 芦田愛菜、宮本信子出演。同名漫画が原作で、岡田惠和脚本。118分。

 

感想

 BL漫画が縁で仲良くなった女子高生と老婦人の交流を描く。正直なところ、個人的にはBL漫画の何が良いのかさっぱり分かっていないのだが、恋愛小説が好きな人がいるのは分からないでもないので、その中で特にこのジャンルが好きなだけ、と考えればいいのだろう。

 

 ただ劇中で「応援したくなる」と言っていたので、登場人物の誰かに感情移入して疑似的に恋愛を楽しむわけではなく、むしろ「スラムダンク」のようなスポーツ漫画を読んでいる感覚に近いのかもしれない。観客として、最後まで何が起きるか分からない予測不能な展開に手に汗を握り、起死回生のスーパープレーに快哉を叫ぶ。感情移入しづらい異性しか出てこないのに...と思っていたが、そういうことなら腑に落ちる。

 

 

 ひょんなことから始まった年の差の離れた二人の交流だが、単なるほんわかとした話に終始しないのがいい。主人公の女子高生は仲良く話をしながらも、体力的に衰えのある老婦人を自分と同じ感覚で扱おうとしていたことに反省したり、本心を隠して子供らしく振る舞ってごまかす自分に嫌悪感を抱いたりしている。

 

 他者は自分とは違う人間であることを理解し、その違いを尊重したうえで良好な関係を築こうとする姿は美しい。まったく属性が違いそうな者同士が仲良くしているのを見ると心動かされるのは、それが分かりやすく伝わってくるからだろう。

 

 主人公は老婦人に背中を押され、やりたかったことにチャレンジするようになっていく。自分のやりたいことを公言するのは色々な意味でしんどいが、それを話せる友人が一人でもいることがどれほど心強いか。そんな老婦人の存在を心強く感じて、恐る恐る足を踏み出した主人公だったが、彼女が不在になると途端に弱気になって怖気づいてしまう。

 

 クライマックスは、二人が仲良くなるきっかけになった漫画の作者のサイン会に参加するシーンだ。普通は現地集合だとしても、一緒に並ぶのでは?と思わなくもないが、彼女たちの友情が回り回って、作者すら巻き込み、世界をより良いものにしていたことにあたたかな気持ちになる。そして高齢の老婦人に何か悲しい出来事が起きることもなく、そのままスッとエンディングを迎えたのも好感が持てる。二人の友情はこれからも続く。

 

 主演の芦田愛菜が、グイグイ来るわけでもないのに魅力的な存在感を放っていて、相変わらず巧い。時々焦ったりビビったりして固まる姿が可愛らしく、可笑しかった。老婦人役の宮本信子と歌うエンディング曲もいい味を出している。

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 影の部分も描かれていた主人公とは対照的に、老婦人が常に心優しいだけの描写だったのは気になった。しかし将来の不安を色々抱える若者とは違い、先行きが見えている老人は、覚悟さえできていれば案外と心安らかにいられるものなのかもしれない。とはいえ、それも彼女を気遣う家族や近所の人がいて、経済的にも余裕のあるような環境にいてこそだろう。

 

 そう考えると、これからはそんな若者を後押しするような余裕あるお年寄りはいなくなっていくのかもしれない。寂しい気持ちになる。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 狩山俊輔

 

脚本 岡田惠和

 

原作 メタモルフォーゼの縁側(1) (カドカワデジタルコミックス)

 

出演 芦田愛菜/宮本信子/高橋恭平/古川琴音/汐谷友希/伊東妙子/菊池和澄/大岡周太朗/生田智子/光石研

 

音楽 T字路s

 

メタモルフォーゼの縁側 - Wikipedia

 

 

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