BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「マイクロスパイ・アンサンブル」 2022

マイクロスパイ・アンサンブル (幻冬舎文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 猪苗代湖畔で毎年任務を遂行するスパイと、時おり訪れる男の人生が交錯していく。

 

 福島・猪苗代湖で毎年開催されている音楽イベント「オハラ☆ブレイク」の会場限定冊子のために書き下ろされた小説を一冊にまとめたもの。

 

感想

 スパイや大学生の男が絡む猪苗代湖畔の出来事を描く。敵対組織との戦いを繰り広げるスパイは、昆虫を乗り物にするような小さな存在だ。人間もスパイも互いの存在を見ることはできないが、気付かないうちに助け、助けられている。著者の名前だけで手に取り、ちゃんと本のタイトルを認識していなかったが、まさにタイトルそのままの内容だった。

 

 基本的には、毎回ピンチに陥ったスパイが、そんなことなどつゆ知らない男のふとした行動によって救われるという展開だ。奇妙な偶然、不思議な奇跡の妙味がある。確かに、自分の力を越えたところで何かに運命を左右されているように感じることはある。

 

 

 だから頑張っても仕方がないと思うか、そういうこともあるから出来るだけ頑張ろうと思うかで、また人生は変わってきそうだ。スパイも男も、やれるだけやったことで状況は好転した。助けられてばかりだったスパイが逆に助ける側になり、まだ見ぬさらに大きな力の存在を予感させるラストは、小粋な結末だった。

 

 一年ごとの物語で、毎回猪苗代湖が舞台となっており、不思議な設定だなと思っていたのだが、元はイベントのために書き下ろされた小説だと知り、合点がいった。唐突に登場する奇妙な歌詞にも戸惑いがあったが、このイベントによく出演しているトモフスキーとTheピーズの楽曲からの引用だった。

 

 小ぶりな印象の小説だが、毎年このイベントに足を運び、猪苗代湖のほとりで一章ずつ読んでいたら、かなり味わい深かっただろう。そんな読み方が出来た人たちを羨んでしまう。特に、大学生だった青年が社会人となって仕事で揉まれ、恋人が出来て結婚し、と一年ごとに人生のステージを着実に進める様子をリアルタイムで見守るのは、感慨深かったはずだ。

 

 最後に二十五年後の話が加えられているのもいい。失くしものを見つける話が多いなと思っていたが、ちゃんとセルフツッコミも入れている。

 

著者

bookcites.hatenadiary.com

 

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com