★★★★☆
内容
映画に「慣れない」著者の、映画評や映画にまつわる話を集めた本。
感想
様々な映画の話が出てくるが、映画の原作者として語る話は面白かった。
原作者は映画を中止に追い込めるほどの強い力を持つ。だから、制作側が原作者と接するときはピリピリしているらしい。撮影現場を見学に行けば異常に丁重に扱われ、遠慮して行かなければ不満があるのか?と警戒される。強大な力に怯える様子を見せられてばかりでは、疲れてしまいそうだ。
原作者は娘を嫁にやるような気持ちで、作品に使用許可を出しているとした上で、その心情を語る。
子供の家庭に口出しするのは野暮だから、あれこれ介入せずにいようとも思う。だが、自分が産んだ娘のはずだった作品が、監督や役者の手柄になり、話題になり、蚊帳の外に置かれることは寂しい。そこを「寂しい」「俺の手柄なのに」という言い方で怒ってはおとなげないから、別のなにかにかこつけて怒ってトラブルになったりするのだ(私見です)。
p206
だから、欲しいのはピリピリではなく「褒め」だ、キューブリックも「スティーヴン・キングの原作サイコー」て言ってたらこじれなかった、という話には思わず笑ってしまった。ただ、昨今のトラブルの多くは、嫁に出した娘がDVを受けている、ネグレクトされている、といった類のものが多そうだが。
そして、原作者の側も作品に対して、過保護だったり、放任主義だったりと、いろんな態度の取り方がある。使用許可をもらう側にとっては、あれこれ注文されないのが一番だろうが、原作者がどんな態度を取るのも自由で、良い悪いはない。制作者は原作者の機嫌を損ねないようにやるしかないのだろう。ピリピリしてしまうのも分からないでもない。
その他、映画評も多く収められている。独自の視点は興味深かったが、オタクの自己愛で評価するのは自重しなければ、と自らを戒める様子は少し不思議でもあった。映画なんて「オッパイが見れたので星5つ」とか「サメが出てこなかったので星ひとつ」とか、それぞれが個人的嗜好丸出しで好き勝手に評価するものだが、そこは公正を期そうとしているのかもしれない。美学なのだろう。
それから、最後に映画備忘録として、著者が観た映画の数行程度の寸評が三段組でたくさん収められているのだが、これがずっと読んでいられる。短いので、時間がある時にじっくり読もうとか、見ていない映画だからまだ読まないでおこうとか、変に気にすることがないからだろう。こういう形式は、今の時代によく合っているのかもしれない。
著者
