★★★★☆
あらすじ
多摩で喧嘩ばかりして暮らしていた青年は、仲間らと共に京に出て、やがて新選組として名を馳せるようになる。
新選組副長、土方歳三の生涯を描く。148分。
感想
土方歳三の生き様が描かれる。彼が実質的な指揮を執った新選組の様子も同時に描かれるが、代表的な出来事を挙げながら、その成り立ちから行く末までを分かりやすく、テンポよくまとめている。
見えてくるのは、土方の「かたち」を重んじ、それさえ納得できれば何でもやるという、いわばヤクザ的な姿勢だ。尊王攘夷とか開国とか、国の将来はどうでもよく、自分たちの組織を強くする事だけを考えている。「バラガキ」と呼ばれた少年時代の喧嘩屋のマインドのままである。マイルドヤンキー、というかヤンキー的とも言えるかもしれない。
今でも同じように考えて行動している人はたくさんいるが、それが時代や世間の希望とマッチすれば良い人たち、そうでなければ悪い人たちとなる。ただどちらにしても自分たちのことしか考えていないので、扱いが厄介な人たちとは言えるかもしれない。最近は政治の世界でよく見る気がする。
芹沢鴨暗殺や池田屋事件など、激しい戦闘シーンがいくつかあるが、どれも綺麗なチャンバラではなく、なりふり構わない立ち回りだったのはリアリティがあった。きっと生死を分ける場面ではこんな風になるはずだ。刀をやたらめったら振り回すし、足も手も使う。迫力あるアクションシーンはどれも面白く、時に凄惨で見ごたえがあった。
新選組は、主人公である土方と、近藤勇、沖田総司の三人を中心に描かれていく。他のメンバーも丁寧に取り上げていたら時間がいくらあっても足りなくなってしまうので賢明な判断だ。
だがそんな中で、山崎丞を演じたウーマンラッシュアワーの村本大輔が意外にも良い存在感を示していた。いかにも監察方らしい厭らしさがありながらも有能ぶりも見せていて、得体のしれない魅力的なキャラとなっていた。
あまりわざとらしく盛り上げるような演出はなく、どちらかというと淡々と進行する映画だが、どのシーンも臨場感があるのでダレることなくずっと見ていられる。同じ監督と主演のコンビで、同じ原作者の作品を映画化した「関ヶ原」も面白かったが、藩ではなく個人がメインとなるこちらのほうがよりしっくり来てより楽しめた。
この感じでどんどんと司馬遼太郎の小説を映画していって欲しいくらいだ。もしくはこの感じでもっと詳しく描ける大河ドラマをやってもらって、SNSがざわつくのを見てみたい気もする。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 原田眞人
出演 岡田准一
鈴木亮平/山田涼介/伊藤英明/尾上右近/山田裕貴/たかお鷹/坂東巳之助/安井順平/谷田歩/金田哲/松下洸平/村本大輔/吉田健悟/村上虹郎/阿部純子/ジョナ・ブロケ/大場泰正/坂井真紀/山路和弘/酒向芳/松角洋平/石田佳央/淵上泰史/渋川清彦/マギー/三浦誠己/吉原光夫/森本慎太郎/髙嶋政宏/市村正親
音楽 土屋玲子
編集 原田遊人
登場する人物
土方歳三/近藤勇/沖田総司/芹沢鴨/お梅/松平容保/徳川慶喜/井上源三郎/孝明帝/山南敬助/永倉新八/藤堂平助/斎藤一/山崎烝/原田左之助/岡田以蔵/糸里/ジュール・ブリュネ/佐藤のぶ/佐藤彦五郎/外島機兵衛/新見錦/久坂玄瑞/桂小五郎/中島登/大沢逸平/宮部鼎蔵/伊東甲子太郎/市村鉄之助/清河八郎/本田覚庵
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