★★★☆☆
あらすじ
地下格闘技で覆面のモンキーマンとして戦う男は、幼い頃に村を焼き母を殺した者たちへの復讐の機会を窺っていた。
シャールト・コプリーら出演、ジョーダン・ピール製作。121分。
感想
インドを舞台にした復讐劇だ。富裕層と貧困層の凄まじい格差、犯罪が常態化した庶民の暮らし、政治と宗教の癒着など、インドの諸問題を炙り出しながら進行する。普段知ることのないインド社会の日常が見られて新鮮だ。
主人公は、母親を殺し、村を焼き払った勢力に復讐を果たすため、彼らが運営し、集まる高級売春クラブに潜入し、その機会を窺う。信頼を得て行動できる範囲を広げ、丹念に情報を集めて着実に準備を行う様子はワクワクする。
そして、ついに復讐は実行に移される。だが、一瞬の躊躇が災いして失敗し、逃走することになる。この逃げる時は、ためらうことなく立ちはだかる相手を次々と倒していったので、最初からそうしていればすぐ終わった話なのに、と思ってしまうが、初めてなのだから仕方がない。おかげで再度やり直しをする羽目になってしまった。
なんとか命拾いした主人公は、再び立ち上がる。助けてくれたグル的存在の力を借りて鍛錬し直す様子は、修行するカンフー映画のようでもあり、ヨーダの教えを受けるルーク・スカイウォーカーのようでもある。そして改めて敵地へと乗り込む。
戦いで繰り広げられるアクションは、激しくて見ごたえがある。窓ガラスを割って飛び降りようとしたら割れなかったり、さんざん盛り上げておいて一瞬で勝負をつけてしまったりと、その合間に見せるコミカルなシーンもアクセントになっている。最初に失敗して逃げた時の、斧を持った男との戦いで、何度も相手の鼻を噛むシーンには笑ってしまった。
ただ、復讐譚としては深みに欠けるようにも感じる。そもそも主人公が、普段はどんな風に暮らしているのかも分からないし、彼の心の迷いや葛藤といった人間らしい感情もあまり見えない。
そのかわりに描かれるのは宗教的な話で、復讐にまつわる諸々のテーマは神様に全部丸投げしてしまっている印象だ。インドではそれが普通、という文化の話なので「そうなんだ」としか言えないが、そこがしっくりこない。主人公が復讐を果たすシーンに残虐さが滲み出ているのも、神様に託しているが故なのだろうなと思ってしまった。
インド社会に対する批判的な描写は随所に見られ、格闘技の場面も、下層民らしく振る舞うことを要求する社会に反抗してみせた、ということなのだろうが、その前にやはり個人的なことはしっかりと描いて欲しかった。それがないと深みが出にくい。
物足りなさは感じてしまうが、映像や音楽でしっかりと築かれた世界観の中で、見ごたえあるアクションやトボけたユーモアが展開されるので、映画体験としてはなかなかのものが味わえる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/出演 デーヴ・パテール
脚本 ポール・アングナウェラ/ジョン・コリー
製作 イアン・クーパー/クリスティーン・ヘーブラー/ベイジル・イヴァニク/エリカ・リー/バヴァンド・カリム/アンジェイ・ナグパル/ジョーダン・ピール/ジョーモン・トーマス
出演 シャールト・コプリー/ピトバッシュ/ヴィピン・シャルマ/シカンダル・ケール/ショービター・ドゥーリパーラ/アシュウィニ・カルセカール/マカランド・デシュパンデ
音楽 ジェド・カーゼル
撮影 シャロン・メール

