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「もっとしなやかにもっとしたたかに」 1979

もっとしなやかにもっとしたたかに [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

  妻が蒸発し残された幼い子供を姉夫婦に預けて暮らす運送業の男は、ある日若い女性と出会う。

 

感想

 妻に逃げられ立ち直れずに、孤独に暮らす奥田瑛二演じる主人公の前に現れる不思議な少女。その少女を演じる森下愛子が魅力的だ。何を考えているのか、何をしようとしているのかが予測できず、でも放っておくことが出来ないような小悪魔的な魅力。今でもそんな感じの役柄をやる事が多いが。どことなく今の水原希子にも似ている。

 

  蒸発していた妻が見つかり必死で連れ戻そうとする主人公。正直、子どもを置いて黙って出ていった妻とやり直そうとするのが良く分からないが、彼には彼なりの思いがあるということだろう。ただ、よりを戻したとしても定期的に出て行きそうな気はする。中途半端な状態では気持ちの整理がつかないから、けじめをつけるという意味で一度話し合いたい、ということなら理解できるのだが。

 

 そんな二人の間に森下愛子演じる謎の少女が割り込んできて物語は展開する。ただこの三人だけではなく、妻の兄だったり、主人公の姉夫婦や病床の父親、親友などの周辺の人物たちの心模様がしっかりと描かれていて、彼らもそれぞれの思いを抱えていることが良く分かる。

 

 

 特徴的なのは皆が不器用で変なところで優しいということ。頑なだったのに変なところで流されて気を許したりする。それぞれの気まぐれや曖昧な心が交錯して、事態は複雑なものになっていく。でも人生なんてそんなもの。目的に向かって真っすぐに進む人は少なく、ふらふらと寄り道をしながら目的地すらもよく分からずに歩いて行く。

 

 背後で流れる音楽が常に呑気な雰囲気だったのが印象的だった。まるで当事者にとってはドラマティックかもしれないが、それ以外の人にとっては別に何でもない事だといっているかのよう。でもその個人的ドラマが重要だ。

 

 終盤はちょっと意外な展開が続いて面白かった。妻とよりを戻せそうで、でも不思議な少女も気になるし、という事でああいう着地点になったのかもしれない。その片方だけであれば幸せに暮らせたのだろうと思うと、人生は上手くいかないものだと考えさせられる。

 

 その終盤で短い登場をしている蟹江敬三。登場シーンの最初のインパクトがすごい。あの顔にあの髪型は強烈に印象に残る。まるで出オチのように、登場しただけで思わず笑ってしまうほどだった。

 

スタッフ/キャスト

監督 藤田敏八

 

出演 森下愛子/奥田瑛二/高沢順子/風間杜夫/梅津栄/加藤嘉/赤座美代子/河原崎長一郎/根岸明美/蟹江敬三

 

音楽 篠崎コウヘイ
 

もっとしなやかにもっとしたたかに [DVD]

もっとしなやかにもっとしたたかに [DVD]

  • 発売日: 2012/02/02
  • メディア: DVD
 

もっとしなやかに もっとしたたかに - Wikipedia

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