★★☆☆☆
あらすじ
室町時代中期。洛中警護役とも親しくする浪人の男は、疫病や飢饉で荒廃した世の中を憂い、庶民のために立ち上がる機会を窺っていた。
大泉洋主演、長尾謙杜、堤真一ら出演の史実を題材にした時代劇。入江悠監督、垣根涼介原作。135分。
感想
室町時代に実在した浪人、蓮田兵衛(はすだひょうえ)が主人公だ。前半は苦しむ庶民とそれを省みない幕府の姿を、後半はそれを憂えた主人公がリーダーとなって一揆を起こす様子が描かれる。
苦しみを耐えに耐え、ついに機が熟したと大衆が蜂起する中盤のシーンは、映画の大きなターニングポイントだ。だが大興奮している彼らほど、観客の気分は盛り上がっていない。彼らが虐げられ、無残に死んでいく場面はたくさんあるのだが、それがしっかりと心に残るように描かれていないからだろう。流れ作業のようにそれらのシーンが流れていくだけだ。
また、死体の山やあちこちに散らばる大量の人骨など、悲惨な状況が分かるシーンも嫌というほどあるが、それが幕府や商人のせいだと直感的には分かりづらいせいもあるだろう。幕府が直接彼らに危害を加えるシーンはほぼ無いので、幕府に対する怒りや憎しみの感情は高まっていかない。
これは現代でもそうで、物価高が止まらないのも生活が良くならないのも庶民の生活を省みない政府に原因があるのに、その因果は分かりづらい。だから怒りの矛先をあさっての方向に向けてしまいがちだ。そして無関係の誰かを敵に仕立て、攻撃を始めたりもする。
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だが映画の中の大衆は、幕府や商人が悪いと見誤ることなく正しく怒り、一揆を起こした。主人公に賛同する庶民が次々と加わってその数を増やし、一大勢力となって都の中心になだれ込む。まさにスペクタクルで、まさにクライマックスなのだが、見ているこちらはまさかの眠たくなる事態に陥っていた。大勢でワーワーと騒ぎ、揉みあっているだけなので面白みが何もない。
考えてみると、借金の証文を焼くという一揆の目的は、映画的にとても地味だ。また怒りや憎しみを一身に引き受けるようなラスボスもいない。怒りのボルテージがそもそもそれほど上がっていない中で、対象のはっきりしないぼんやりとした戦いを見せられてもテンションは下がるだけだ。この戦いの着地点も見えない。
登場人物たちも前半のシーン同様に流れ作業的な描かれ方なので、特に誰かに感情移入することもなく、彼らの生死に感情が動くこともなかった。主人公に関しても、苦しむ大衆の前に現れるも目についた母娘だけしか助けない冒頭のシーンが象徴的だったが、まるで人気取りの政治家のように見えてくる。きっと愛想がいいのはカメラがある時だけなのだろうな、と変な想像をしてしまう。
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セリフも聞き取りづらく、なぜか西部劇風の音楽も気になるしで、一向に気分が盛り上がっていかない映画だ。主人公の愛人の元に子分的な男が戻ってくるラストも、それがどうしたのだ?と首を捻るだけだった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 入江悠
出演 大泉洋/長尾謙杜/松本若菜/遠藤雄弥/前野朋哉/阿見201/般若/武田梨奈/水澤紳吾/岩永丞威/吉本実憂/ドンペイ/川床明日香/稲荷卓央/芹澤興人/中村蒼/矢島健一/三宅弘城/北村一輝
音楽 池頼広
