★★★☆☆
あらすじ
就職活動中の男子学生は、情報交換のために友人らとグループを作り、定期的に集まるようになる。
佐藤健主演、有村架純、菅田将暉、二階堂ふみら出演。朝井リョウ原作。97分。
感想
就職活動中の大学生グループを描く群像劇だ。不安だから集まり、励まし合ったり慰め合ったりするが、その反面、嫉妬や焦りも渦巻いている。「(うちの会社に)あなたは必要ない」と何社からも言われ、存在自体を否定されたような気がして自尊心が傷つく期間だから、皆、なんとか自分を保とうと虚勢を張ったり斜に構えたりと、必死に防御している。
彼らは表面上は仲良くしながら、その場を離れると相手に対する非難めいた言葉を口にする。また互いにツイッターをチェックして、承認欲求や自己顕示欲の匂いを嗅ぎ取り、冷ややかな反応を見せる。客観的に見ると怖くて、気持ちがしんどくなるが、昔から割と誰もがやっていることだ。SNSも個人の内心が可視化されただけに過ぎない。
だからそれが描かれるのはいいのだが、彼ら就活グループが表面的にも全然楽しそうでないのがつらい。みんなが笑顔を見せるシーンがなく、いつも互いにけん制するような身構えた雰囲気がある。
就活のために集まったグループなので、有意義ならそれでいいのかもしれないが、楽しくなければ自然と足は遠のくはずだ。怒号が飛び交わないタイプの、陰気で悪い気が充満しているブラック企業みたいで、こんな集まりにせっせと通えるなら、もうどこの会社でもやっていけるよと彼らに太鼓判を押したくなる。
彼らを無駄に元気で明るく、非難も冗談めかしてするような集まりにしてくれた方がリアリティがあったような気がする。菅田将暉演じる学生はそんな感じだったが、他が暗すぎた。今は、楽しくなくても行っておいた方がいいからと、半ば打算的に参加するのが賢い態度になっているのかもしれないが。
斜に構えていた主人公は、皆に隠れて取っていた行動がバレてしまう。だが、それまでの彼のコソコソとした動きからとっくにネタバレしていた。それに彼の普段の言葉を聞いていたら驚きもない。
しかし、秘密がバレる原因ともなったが、登場人物らがスマホを貸し借りするシーンには冷や冷やした。これはスマホが普及し始めた頃だからなのだろうが、今でも「スマホを貸して」なんて頼む人はいるのだろうか。他人に見られたくないもので一杯だから、もはや気軽に貸してくれる人などいないような気がする。今やパソコンよりもパーソナルなものだ。
人間を追い込む就職活動の闇が描かれていて悪くないが、あまりにもしんどい空気が続くので暗鬱としてくる映画だ。マニュアル的な就職活動の紹介や就活あるあるなど、息抜きとなるようなシーンを織り交ぜても良かったかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 三浦大輔
原作
出演 佐藤健/有村架純/二階堂ふみ/菅田将暉
音楽 中田ヤスタカ
